ハグしてください〈ハイキュー短編集〉

#黒尾鉄朗 ページ50

「鉄朗」


「ん？あー、はいはい」


胡座を書いた彼の上に乗せられて


向かい合う形でくっつく。


なんでこんな赤ちゃんみたいな体勢になるのかは


謎なんだけど、これが一番安心する。


休みの日、天気も悪くて外に出れない。


そんな感じの日。


お互い好きなことしてたけど


一日暇ならかまって欲しくて。


「急にどうしたの」


「なんか、んー、くっつきたくなって？」


「可愛いかよ」


「可愛いよ」


「おい」


至近距離でドキドキしない訳じゃないけど


普通に話せるようになったのは


付き合いたての私からしたら進歩だ。


顔すら見れなかった高校時代が懐かしい。


散々鉄朗にいじられて、からかわれて


怒ったり照れたりしてたら


だんだん慣れてこの距離になった。


「どーしたの」


「んー？」


「すげぇ幸せそうな顔してる」


「んふふー幸せだなあって」


素直に言ったら、


目を丸くした鉄朗が


私の肩に頭をぐりぐりしてきた。


きっと照れてる、


誤魔化し方が可愛くて頭を撫でたら


不満そうな顔と目が合った。


「んー？」


「なんか扱いがガキ」


「可愛いからいいじゃん」


「納得いかねー」


「わっ、ちょっと苦しいよ」


ぎゅーぎゅーって音が似合うくらい抱きしめられて


苦しいけど笑いが込み上げてくる。


190の男がこんなに可愛いなんてずるいよね。


「Aの方が可愛いだろ」


「知ってるー」


「うわ、なんかムカつくわ」


ほっぺたを挟まれて


ゆっくりキスをされた。


離れてじーっと見つめられると


やっぱり照れる。


「はい、照れた。」


「言わないで」


熱くなった顔を隠したくて


鉄朗の胸に顔を埋めたら


笑い声が上から聞こえた。


「ほら、可愛い」


耳元で言われた言葉。


私が大好きな鉄朗の声は破壊力が強くて。


「…ずるい」


「そりゃドーモ」


まだ抱きしめられたまま、


ゆらゆら揺らされて眠くなる。


やっぱり安心するー。


「なあA」


「なに？」


「待って寝ないで」


「大丈夫、寝ない、頑張る」


「いや、無理だなこれは。」


そのまま2人で夕方から寝て、


お腹がすいて夜中に起きた時


左手の薬指に輝くものがはまっていて


鉄朗を叩き起したのは


今となっては笑い話。

この小説の続きへ→←#赤葦京治

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す