ハグしてください〈ハイキュー短編集〉

黒尾鉄朗 ページ11

絶対もう待ってる


そう思って軽く走った。


「お待たせ！」


「おー。お疲れさん」


差し出された手を握って歩き出してから


バレないようにため息をついた。


お兄ちゃんと家族の仲が悪くて


お母さんが毎日泣いてるとか、


テストがいつになく悪いとか、


色々悪いことが重なってる。


学校で隠しながら笑っていても


やっぱりこの男にはお見通しみたいで。


「今日ウチ来ます？｣


「うん行く。」


鉄朗の部屋にお邪魔して


いつも座る定位置に落ち着いた。


「なーなーAサン」


「なに？」


「俺の事ぎゅーってして」


普段は出さないような甘えた声で。


「言い方気持ち悪」


「そーやって言わないで貰えますー？」


問答無用って抱えられてあっという間に鉄朗の膝の上


安心させるようにぎゅってされて


頭を撫でられて、


涙が溢れてきた。


「こうでもしないと溜め込んだまんまだろ」


「てつ、ろっ」


「喋んなくていいから」


涙が出るのに任せて、


鉄朗にしがみついた。


「ホントお前は辛いとか言わないよね。もうちょい俺には素直になってくださいよ」


「すき、大好き。」


思ったままにそういうと、


「それは反則だろ」


真っ赤な顔と一緒に言われた。


素直になれって言ったのそっちじゃない。


鉄朗がいつも甘やかしてくれるから


私は頑張れる。


「A、愛してる」


「へっ」


「顔真っ赤」


「鉄朗なんか嫌い」


「人の膝の上乗ったまんまでよく言えるな」

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