幼なじみの君へ (ページ28)

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及川と2人で電車に乗った。

夜の時間、まあまあ混んでて端っこに立った

何を話したとかはあんまり覚えてない

緊張しすぎて。

でも、Aと岩泉のことを話す及川が

私にはどうしようもなく悲しく映ったのは覚えてる

「なんでいっつも我慢してるの？」

「へ？」

「Aのこと好きなんだよね？」

「なんでしっ、えっ？」

及川でもこんな顔するんだ。

そう思うくらいの赤い顔。

好きな人が別の誰かを想ってこんな顔するのは

凄く心臓が痛かった。

それが親友ってことも痛い。

「バレバレだよー。岩泉とAは気持ちダダ漏れだし鈍感だから及川のこと気づいてないけど、意外と及川もわかりやすいよ？」

「嘘だよ」

「ほんと」

Aのこととなると表情こんなに変わるんだね。

そう言いたくなった。

「華鈴ちゃんだけ？」

「いやぁ、松川とかも気づいてるでしょ」

うええ～？って変な声出して悩むから、

ちょっとむかついた。

「及川がA達を応援してるのは知ってる。でも辛いなら他の誰かに言ってもいいと思う…って私何言ってんだろうね。ごめん」

「華鈴ちゃん、ありがとう」

「えっ？」

「誰かが知ってくれてると楽になるって初めて知った」

…その笑顔はなんだ。

見たことない。

さっきとは違った感じで心臓が痛い。

「華鈴ちゃんの家ってここら辺？」

「あ、うん。ごめんね。こんな所まで。」

「いいよいいよ。こっちこそありがとね。」

家の前まで来て、及川に手を振った。

Aにはああ言っておいて1人は怖かったから

ほんとにありがたい。

「華鈴ちゃん、ありがとね」

息が止まるかと思った。

及川の見たことはあるけど、

私に向けられることは無かった笑顔に。