《BTS》新人発掘課の私、無名練習生を持つ。 (ページ13)

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「「こんにちは」」

『…こんにちは』

ジョングクに負けず劣らずの、いや、彼よりも礼儀正しい4人。

廊下ですれ違うと必ず、わざわざ立ち止まって礼をするのだ。
堅苦しすぎるくらいしっかりしていた。

あの子達が先輩達の口からよく出るデビュー候補だという事は少なからず知っている。

練習期間も長い方で、優秀な実績を残すメンバーもいると聞く。中には社長からの大きなバックアップを受けるメンバーもいるとか。

未だパフォーマンスを見た事はないけれど、確かにオーラはあった。まだまだ若い青年なのに。

『今日で1週間、』

選考漏れの練習生達のレッスンが始まってから1週間。

学業も大変だろうに、そんなのはお構い無しに毎日きついレッスンが行われていた。

学業優先で、なんていうのはほぼほぼ社交辞令で、マニュアルに書かれているから言っているだけのような上っ面の言葉。

結局アイドルになるには学業よりまず実力を磨く事が優先で、

というよりまず、学業に打ち込む暇さえ作られないのである。

この国では大学進学率が高く、どこに行くにも経歴が重視された。
しっかりとした経歴があれば将来有望であり、良い生活が確証される。

そんな中、アイドル練習生というのは、生きていく上で大きな名刺になる大切な学業を捨てて練習に励む。

だから命を懸けてでもデビューしなければいけない。

練習生になると決めた時点で、残された道はデビューするという道しか残ってないのだ。

しかし、デビュー後に待っているのは売れるか売れないかの2択。

売れなければ今までの努力は水の泡になるし、将来はまた不確証になる。
デビュー出来る子でさえ一握りと言われている中、売れるアイドルはさらに少ない。

こんなイチかバチかの不安定な道に進みたいとは私は全く思わない。

私は今まで、周りの言う"普通"通りに生きてきた。
そうすれば裕福とまではいかなくとも、不自由ない生活を送れるのだとこの身で学んできたのだ。

私には一生分からないのだろう。

見える景色をぐらつかせてまで、確証の無い未来に走る彼らの気持ちが。

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