二輪の花 ページ3
「私もですよ」
これは驚いた。
彼女の返答に思わず、声が出そうになった。
剣術の才能もあり、そして医療に関しても様々な彼女を褒め称える噂があるのに対して彼女は俺と同じ答えということなのか。
何故だ…?
『どうしてなのです?』
「私は普段1匹でも多くと心がけ、鬼の頸を切っ
たり新しい人類に役立つ薬品を作っています
が、特にこれといった目標は無いですよ。』
『…!? しかし、東條様は数々の命を今まで救ってきました。』
俺は素早く言い返した。
「それは貴方もですよ。」
ふわっと甘い香りが周りに広がる。
東條様が俺の目を捉えながら微笑む。首を傾げていたので上目遣いのような状態になった。
東條様は無自覚でやっているのに対し、なお鼓動が一段と早くなった。
「あれは、私が任務を終えて、帰宅している時でした。鬼の気配がしたのですぐさま気配の元へ行くと、貴方は幼い子供を庇いながら稀血を食った鬼と戦っていました。」
「私が刀を握った直後、貴方は涙を流しながら稀血を食った鬼の頸を切っていました。そして、斬り終わったとき貴方は両手を合わせて鬼に慈悲をかけていました。その時、私は鬼が泣いていた事に気づいたのです。」
俺は黙って東條様の話に耳を傾ける。
「私は涙を流しました。鬼であれ、元は人間。鬼だって人間だった頃がある。」
「私は貴方に痛感させられましたよ。」
『……。』
「目標なんて、今はなくていいのです。もっと時間をかけて見つけていくものですよ。貴方は優しい心の持ち主です。
きっと…きっと貴方は救われる。」
俺は涙を流した。涙なんて出たのは何年ぶりだろうか。
きっと手で数えられるものでは無い。
『…ッッ ありがとう…ございます。』
東條様は清潔な刺繍の入ったハンカチを俺に差し伸べた。
「感謝なんてとんでもないですよ。私が貴方には感謝したいくらいなのですから…
私に優しさを気づかせてくれてありがとう。」
彼女の笑顔はまるで美しい花が咲いたようだった。
「ではまた会いましょうね。」
『……はい!!!!』
俺に生きる希望をくれた人。
彼女は俺が優しさを教えてくれたと言うが、
俺が彼女に優しさを教えて貰ったという方が正しいだろう。
明日、明後日 時が過ぎていこうとも、
俺は俺自身の道を進んでいこう。
そう心に決めた。
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アイリ - もうこの小説は神ってますね…最強です! (2021年12月11日 12時) (レス) @page11 id: 9da3e59768 (このIDを非表示/違反報告)
kyr - エ…。し、小説書くの上手すぎません?…、とてもとても凄くて、惚れました! (2020年8月2日 9時) (レス) id: 1a9dc60db7 (このIDを非表示/違反報告)
くまん(プロフ) - メロンソーダ大好き人間さん» ありがとうございます! 少しスランプ気味だったんですけど、これから遅い更新になると思いますがよろしくお願いします!☆ (2020年1月22日 0時) (レス) id: 7a77bfda0d (このIDを非表示/違反報告)
メロンソーダ大好き人間 - 初めまして!とても面白いですね!!続き凄く気になります!!ゆっくりでいいのでお願いします!!更新頑張ってくださいね!! (2019年12月9日 20時) (レス) id: 0747bee2c2 (このIDを非表示/違反報告)
くまん(プロフ) - しらとぅさん» しらとぅ様、ありがとうございます! 作者は変態なので 皆さんが引いてしまうんじゃないかと内心ひやひやしながら執筆してます笑 コメントして貰えるのって凄く嬉しいし、ありがたいです(T_T) 感謝… (2019年12月3日 0時) (レス) id: 7a77bfda0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃 | 作成日時:2019年11月11日 21時