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「おい、職場でいちゃいちゃすんなって」
「してないって」
突然聞こえた声に署長が後ろを振り向くと、ニヤニヤした顔のゼロストが立っていた。
「じゃあその手は何だよ」
「寝ちゃったからさ、動かして起こしたら悪いなと思って」
ゼロストは小さくため息をついて、だからなんで手をつないでんのか聞いてんだよ、とぼやいた。
「何て？」
「いや、何でも無い」
どうやら忘れ物を取りに来たらしいゼロストは、音を立てないようにゴソゴソと自分の引き出しをさぐった。
「ヤマさ、けっこうAさんには過保護なとこあるよな」
「そう？」
「前しんじもそう言ってた」
「じゃあそうなのかもね、よく無理するからほっとけないところはあるし。最近ムッとした顔よくされるのはそれのせいかぁ」
ちょっと鬱陶しがられてるか、とつぶやく署長に、ゼロストは本日二度目のため息をついた。
「ていうか、過保護じゃなくて大事にしてるって言ってよ。別に俺子供扱いしてるつもりないし」
「ふーん」
帰ろうと後ろに向き直ったゼロストは、後ろを振り返ってこう言った。
「お前鈍感そうだから言っとくけどさ。Aさん、署長が誘拐されたって聞いたとき相当取り乱してたぞ。ユニオンで戦ってるときなんて顔真っ青だったし。ちゃんと自分も大事にされてるって知っとけよ」
「自分も人のこと言えないだろ」
「うるさいな」
じゃあ俺帰るわ、といって帰って行くゼロストを、署長はなんとも言えない顔で見送った。
「…ほんとにどうしよう。イスで寝たら絶対体に悪いし、でも疲れてるだろうから起こすのも悪いし」
うーん、と小さくうなりながら、署長はぎこちない動きでAの頭をなでた。
「心配かけてごめんね。大事…に思ってくれてるかはわかんないけど、俺がいなくて苦労したのは本当みたいだし。さっきいなくならないでって言ってたけど、それはないから安心して。あんなに泣かれたら置いてけないわ。…俺もAさんがいなくなったら嫌だから、俺の前から急にいなくなったりしないでよ？」
署長は一つ小さなあくびをしてこう言った。
「あのさ、もうちょっとだけこうしててもいい？」
後に663円事件と呼ばれるsasatikk署長誘拐事件は、遊園地エンドで幕を閉じたらしい。
史上最大の事件とも言われたこの事件は、多くの人たちを巻き込んで展開されたこともあり、これからも市民の記憶に色濃く残ることだろう。
しかし、最後の短い一幕の物語は、本人たちだけが知っている。
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流 - 見つけたので読んでみたら懐かしくなってロスになってしまいました！凄く良いお話ばかりですね。更新があればkneさんのお話待ってます！ (4月21日 2時) (
レス) id: 3b26bb41f1 (このIDを非表示/違反報告)
lemon - リクエスト書いてくださって本当にありがとうございます！しゃかさんの口調が本当に大好きなので上手くトレースされていてスラスラ引っかかることなく読めました！私が見たかった話そのもので本当にめちゃくちゃ好きです😘 (12月26日 9時) (レス) id: 07a8a3ab03 (このIDを非表示/違反報告)
ねるねる(プロフ) - ありがとうございます!そう言ってもらえるととても嬉しいです! (12月6日 21時) (レス) id: 4974eeeb32 (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - 好きです！応援してます！ (11月24日 17時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねるねる | 作成日時：2023年10月22日 22時
