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「うおッと…危なかった」
横からスッと手が伸びてきて、倒れるはずだった私の体を支えた。
「ケガ人なんだから、大人しく座ってなさい」
諭すような声色に、また子供扱いして、と文句を言いたくなったが、今はそれにさえも、どうしようもなく安心がこみ上げてきた。
「ごめん、さすがに冗談がすぎたね。でもよく頑張ったよ、みんな。もちろんAさんも。ユニオンの時全然ダウンしてなかったじゃん。釈迦さんが報告褒めてたよ、俺も無線きけたらよかったなあ」
松葉杖を立て直してくれた署長の右手を、柄にもなくそっとつかむ。そんなに大きくはないけれど、しっかりとした、安心する手だった。
「…署長、ごめんなさい。今八つ当たりしました。今まで署長がいなくても現場制圧できるように頑張ってたので、本当は褒められて嬉しかったんです。でも、やっぱり誘拐されてもいいなんて言わないで下さい。本当に心配だったんです。もう会えないかと思いました。だから、もう私の前からいなくならないで…」
泣きながらそう言うと、署長は私の横のデスクに座り、右手を軽く握り返してくれた。
「俺もちょっと謝んなきゃいけないことあるかも」
「え？」
署長の方に向き直ると、少し罰が悪そうに目をそらされる。
「ケガしてるのにパシフィックに行ったこと、本当は怒ってる」
「やっぱり怒ってましたか。で、でも、腕のケガ自体はそんなに重傷じゃなかったので、動きには問題が無かったと…」
「いや、パフォーマンスの問題じゃなくて。松葉杖ついて玄関から入ってきたとき、マジでヒヤッとした。俺が誘拐されてる間になんかあったのかと思ってめっちゃ焦った。いつもは無理しようとしても俺が止められるからいいけど、いない間に無理してるかもしんないと思ったら誘拐なんてされてらんないわ」
「いつもはそんなに無理してませんけど」
「この間も徹夜して交通事故連発してたよね」
「…すいませんでした」
署長は小さく笑った後、優しい表情に戻って言った。
「じゃ、約束ね、Aさん。無理な行動はしないで、ちゃんと自分のこと大事にして」
「はい。でも、それは署長も同じですよ。約束してくれます？」
「わかった。お互い約束ね」
そういって、二人で目を合わせて笑い合う。安心したのか、唐突に疲労と眠気がどっとやってきた。
「いいよ、寝な。俺横にいるから」
その言葉を最後に、私の意識は途絶えた。
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流 - 見つけたので読んでみたら懐かしくなってロスになってしまいました！凄く良いお話ばかりですね。更新があればkneさんのお話待ってます！ (4月21日 2時) (
レス) id: 3b26bb41f1 (このIDを非表示/違反報告)
lemon - リクエスト書いてくださって本当にありがとうございます！しゃかさんの口調が本当に大好きなので上手くトレースされていてスラスラ引っかかることなく読めました！私が見たかった話そのもので本当にめちゃくちゃ好きです😘 (12月26日 9時) (レス) id: 07a8a3ab03 (このIDを非表示/違反報告)
ねるねる(プロフ) - ありがとうございます!そう言ってもらえるととても嬉しいです! (12月6日 21時) (レス) id: 4974eeeb32 (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - 好きです！応援してます！ (11月24日 17時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねるねる | 作成日時：2023年10月22日 22時
