【WT】私と貴方とスポーツドリンク ＜短編集＞

＊ ページ22

sm side.


「ごめんなさーい。静かにしまーす」

「俺まだ勉強終わってないのに！」


おちゃらけた声でそう言ったぶるーくは俺の制服の襟を掴んで引きずっていく。
図書室の外に出て、ドアを閉めたら俺のことを離してくれた。


「ちょっ、おい！何すんだよ！」

「さっきあの子に怒られちゃったしね。静かにしないと」

「だからと言ってこんな乱暴に運ぶ奴がいるか」

「それはごめんって〜。それでさあ、さっき見つけたクイズ本やらない？」

「やらない。俺は帰る」


何なんだコイツは。

静かにしないと、なんて言っていたがぶるーくのことだ、何か他に目的があるに違いない。
何が目的だ？何故俺を連れ出した？


「ほら、これ面白そうじゃない？この図の中に三角形はいくつあるでしょうか、だって」

「おい、ぶるーく」

「なにさ」

「なんか俺に言いたいことあんだろ。隠してないで教えろよ」


そう言って軽く睨みつけると、コイツは群青色の瞳をスッと細めて笑った。


「鋭いね。さっすがスマイル」

「何隠してんだよ」

「…ふふっ。僕ね、あの子の事好きになっちゃった」

「…は？」

「いいの？




「スマイルもあの子のこと好きなんでしょ？」

「何言って、」

「図星だね。好きだから、毎日図書室に行ってたんでしょ？」


そう言ってまた笑う。

手にあのクイズ本を持ったまま。
開かれたページに書かれた三角形が俺の視界に入った。


「三角関係だね、スマイル」


目の前の憎らしい笑顔。

ったく。
三角関係だなんて、馬鹿らしい。

廊下を通る風で、ページがパラパラとめくられていく音を俺は唯聞いているだけだった。

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