【WT】私と貴方とスポーツドリンク ＜短編集＞

私と貴方と矛盾＜sm＞■ ページ16

＊軍パロ

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私には嫌いな人がいる。


「右だな。行くぞ」

「まったく、なんで君なんかと…」

「俺だってお前となんか組みたくねえよ。ほら、置いてくぞ」

「最悪…」


私達はWT国暗殺部隊の同期。
今回の任務は隣国の幹部を暗殺すること。

基本的に二人一組で行動しろ、って言われたけど。

何でよりによってペアが嫌いな人なんだ。


「此処から登れそうじゃね？めっちゃ警備ガバガバじゃん。」

「ラッキー。お先に失礼しまーす」

「待てよ。二人一組で行動しろって言われただろ」

「うるっさいなぁ。早く来て」

「言われなくても行くわ」


人には相性という物が存在する。
私とスマイルは本当に合わない。

結構ズバズバ行く私に対し、難しく作戦とかなんたらを考えるスマイルとは目を合わせる度に喧嘩している。

周りの木々の葉がざわめき、不穏な雰囲気を作り出す。

まるで私達の関係を表しているように。


「君とは一生分かり合える気がしない」

「奇遇だな。俺もだ。お前とは一生分かり合える気がしない。てか分かり合いたくない」

「そういうとこだよ君。ほんっと可愛くない」

「うるせえな。静かにしろ。そろそろ標的が来るぞ」


そのスマイルの声で辺りはスッと静かになる。
少ししたらまた葉がざわめき始めた。


「来たぞ」


そのスマイルの合図で私はライフルを構え、スコープを覗く。

引き金に指を掛け、引いたと同時に、




スコープの奥の標的が此方を振り向き、発砲した。




それはあまりにも突然のことだった。

標的の身体が赤く染まると同時に、自分自身の身体も赤く染まった。


最後に見たのは、大きく見開かれたアメジストの瞳。

最後に聞こえたのは私の名前。


「A…」


初めて。
彼が私の名前を呼んだのは、後にも先にもこの一瞬。


彼のことは嫌いだ。

嫌いで、嫌いでしょうがない。

でも、私の心の奥底にある『好き』という感情。

矛盾を抱えるのは、悪い事だろうか。

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