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#83 ページ6

Aside


すうっと、浮かび上がっていくような感覚。


誰かが私に語りかける。


遠くで私の名を呼ぶ声がしたような気がした。


悲痛と哀愁に満ちたその声は
誰のもとも覚束なかったが

それでもどこか懐かしくて


そして


酷く私の胸を刺して消えた...



・・・



静かに目を開けると
いつの日かと同じあの白い天井が
私の視界には広がっていた。


....あぁ、私また助けられてる。


ドアから出るべきか。
...いや、でもどんな顔をして出ればいいのか。

ひとりで考えていると


太「気分はどうだい?Aちゃん」

『ひっ!...だ、だざ...』

すると太宰さんはフっと笑って

太「ずっといたけどなぁ。気づかなかった?」

『ご丁寧に気配まで消していただいて...』

太「あはは。お見通しか。
..心配しないで、変なコトはしてないから。」


....変なコトってなんだ。
いつものその笑顔で言われてもなぁ


『あの、私...』

太「謝るつもりなら結構だよ。
何せ、君がもし谷崎くんを呼んでなかったら
...ひとりでいたなら...」


太宰さんが真面目な顔になって言った。


太「今ごろ死んでたよ」


...サァと血の気が引くのを感じた。


『死んでたって...どうして』

太「Aちゃんは単なる熱風邪ではなかった。
故に解熱薬も効いてない。
...幻聴。それが何だったのか君は知ってる」

『私の異能力です』

恐ろしい何かが私を襲っている。
その事実に気づきはじめ

声が震える。

太「そう。でも、異能力は意図的に発動したのかい?」

『...っ』

違う。

手が震え出した。
太宰さんが私の手をぎゅっと握ってくれた

あの日、少し怖かったこの手が
今は私の安堵に変わっていた

『私じゃない!私の所為じゃないの!』

つぅと一筋、涙が頬を伝った

私は何が言いたいのだろう。
考えるよりも先に言葉がついてでる。

『どうしてこうなったの?
どうして...どこからが間違いだった?
最初っから全部っ...!!』

太宰さんは黙って
私の無茶苦茶な話を最後まで聞いてくれた

私が言ったことに追求はしてこなかったし
私自身、何が言いたいのか全く分からなかった

ただ
「理性でふさぎこんでいた何かが
言葉となって出ていった」
私からすればただそれだけのことだった。

そして私が落ちついたのをみて、こう切り出した。



太「私はね、いつだって死ぬ理由を探してる」

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中木寸(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます!大変励みになります。よければ最後までお付き合いくださいヾ(*´∀`*)ノ (2018年5月4日 19時) (レス) id: f9edf98cd8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - すごいみなさんキャラの口調等が上手ですね!最初から読ませてもらっていますが流石ですね。これからも応援しています!頑張ってください! (2018年5月4日 18時) (レス) id: 03d076c9eb (このIDを非表示/違反報告)
中木寸(プロフ) - 碧唯さん» コメありがとうございます。もしかして一気にですか?!それは嬉しい限りです(*’▽’) これからもよろしくお願いします♪ (2018年1月15日 14時) (レス) id: f9edf98cd8 (このIDを非表示/違反報告)
碧唯(プロフ) - 最初から読みました!面白かったです!!頑張って下さい(・ω・ ) (2018年1月14日 23時) (レス) id: 55280dc4c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:中木寸&沙奈 x他1人 | 作成日時:2018年1月13日 21時

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