118.数年ぶりの言葉 ページ18
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コトリ、とシリウスはワイングラスをテーブルに置いた。
「………それは、どう…して…」
私は静かに問うた。
心臓がうるさい。
じっとりと手のひらに汗をかいている。
「………さぁな。俺もわからない。その場にいた訳ではないから」
「なら、」
「だが奴等は死んだと思い込んでいる。何せ、己の手で殺したのだからな」
シリウスの瞳に僅かに憎しみの色が滲む。
ぐっと眉を寄せ、誤魔化すようにまた酒を煽った。
「その方が都合が良い。あいつらはリアが死んだと思い込んでる。1番の脅威だったから。リアが！1番の…！」
語彙が荒ぶる。
シリウスは、ギリリッ…！と音がなりそうなほど強く奥歯を噛んだ。
「シリウス、落ち着いて…」
「だから奴等はお前を狙った…！最初っから信じてなんていなかったんだ！最初っからスパイだと疑って…！」
次の瞬間にはみるみるとその顔は悲しみに染まっていく。
どうしたのだ。
その瞳には涙が溜まり、ぐっと顔を歪める。
誤魔化すように俯いて、か細い声で言った。
「そうだと知ってて…お前に、あんなこと、させたんだ…」
その言葉は、孤独だった。
誰にも言えなかった本音のようにも思えた。
「都合が良いのは、お前を隠せておけるからだ…。
最初から1番の切り札であり、1番の弱点でもあるリアをいないことにできる……」
「……」
「お前の血は尊い……。他の、どんな奴らよりもだ…。
力がある…。リアにしか使えない魔法がある…。…それは光だ。希望だ。大きな切り札だ。…同時に、……弱点になる」
血を吐くような告白にも感じられた。
世界のどん底に落とされた孤独感を、シリウスは纏っていた。
「シリウス………」
「……そのせいで、リアは、全てを失った…。失わされたんだ…」
どうして、あなたは。
抱きしめたくなった。
目の前の男を、この孤独な男を。
気づいたら立ち上がっていた。
そしてシリウスの目の前に立ち、腕を伸ばしていた。
「……」
背中に手を回す。
体が密着する。
彼の吐息が首筋にかかる。
「私は、いつまでも、あなたの味方だよ」
だから、泣かないで。
その声は果たして涙を流す彼に届いたのだろうか。
でも、そんなことは些細な問題な気がした。
届いていても届いていなくてもどうだって良かった。
シリウスは私の背に腕を回す。
まるで縋り付くように掻き抱き、また涙に濡れた後悔を語る。
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もちお(プロフ) - 寝る前や空いた時間に少しずつ読みました！この作品がとても大好きです、更新楽しみにお待ちしてます！！！ (4月29日 16時) (
レス) @page32 id: 3dbffe5af8 (このIDを非表示/違反報告)
ことり。 - 引き込まれてどんどん読み進めてしまいました！更新楽しみにしています！ (4月4日 22時) (レス) id: 0c2f06c45e (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - ななさん» 更新が滞ってるのにも関わらず、温かいコメントありがとうございます^ ^ 少しずつ時間を見つけて更新していこうかと思います！これからもよろしくお願いいたします。 (9月8日 10時) (レス) id: 7fd5b0eefb (このIDを非表示/違反報告)
なな - 久しぶりに読み返しました、また号泣してしまいました（т-т）無理せず更新されることを願ってます。 (8月27日 1時) (レス) @page28 id: aed3455a0e (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - イジーさん» ありがとうございます！お話更新したので是非^ ^ (2023年3月29日 22時) (レス) @page26 id: 7fd5b0eefb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ihok | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/ihok__
作成日時：2021年9月7日 23時
