独占欲 46 ページ8
『ね、気づいてたでしょ、あの時』
「ん?いつ?」
『ファミレスで、Aに写真撮ろって言った時』
「えー、そんなことあった?」
Aが飲み物を取りに部屋を出て行ったあと、俺は
真っ白な丸い机にお菓子を広げていく奏に問いただしていた。でもそれは俺の見当違いだったのか、首をかしげながら「えー?」と声を出す奏をみると、本当に偶然でAが外を見ようとしたところで声をかけたのか。なんて偶然なんだろう。そんなことを思いだしていると
「まあ、何とかなったから良くない?」
『っおい!』
「いや、あんな露骨に嫌な顔されれば横にいた僕でさえも気づいたのに」
『やっぱり知ってたのかよ!』
「Aがお馬鹿で良かったね」
『おま、人の好きな人に馬鹿とか言う?普通』
「んー、僕だったら言われたくないね」
『それを今さっき俺に言ったんだよ?!』
またいつものように、ふわふわとした奏にペースを持っていかれそうになっていると、ちょうどいい所にあったのか「まあまあ」と俺を宥めるように言いながらぬいぐるみを、ぽふっと軽く投げ飛ばしてきた。
『わっ、ぶねー』
「天月君ナイスキャッチ」
『ナイスじゃないし、これ何?!』
「なんかあったから投げてみた」
『理由雑』
「そう言いながらも返す気ないくせに」
『うっ…』
図星でしかない。
ぬいぐるみを持った時、ふわっと鼻腔を擽ったAの香り。なんだか申し訳ない気持ちになりながらも、もう少しだけ、いつもは遠く感じるAを近くに感じていたくてぎゅっと両手でそのぬいぐるみを抱きかかえていた。
そんな俺の様子を見て、ニヤニヤしながら「恋心って大変だね」なんて言う奏。
そんなの大変に決まってる。好きだけどいつでも好きって言えるわけじゃないし、伝えたくても俺の方に振り向いてくれていなきゃ伝えても意味が無い。だけど今すぐ言いたくて。
仕草とか口癖とか目線とか。見る度に、聞く度に、感じる度に胸がぎゅってして、もうどこにも行かせたくない。俺だけがこれを知っていたい。眺めていたい。そんな気持ちになる。
『奏君には、分かんないもんね』少し皮肉を混ぜた言い方をする。意地悪だったかもしれない、だけど奏君はいつもみたいにふわふわと笑って「そうかもね」そう言った。
なんだか色々含めての言い方に、もやっとしながらも、トントンっと階段を上る音が聞こえてすぐさま話題を変えた。
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サクラ - happyendになってほしーです! (2018年7月27日 16時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゅま | 作成日時:2018年7月18日 5時