人生を一枚に ページ4
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仕事部屋を出て向かうのは資料室。廊下に出ると床は大理石に変わって、一歩進める度にヒールの音が鳴り響く。人が来た時に分かるように建設されている、だとか。
廊下の突き当たりに設置されている資料室は、限られた者しか立ち入ることが出来なくなっていて、部下は上司の許可を得てから厳重なセキュリティを解除してからでなければならない。
それもそうだ、今までの事件ファイルや個人情報などは全てここに保管されている。ついでを言えば、何かあった時にと紙とデジタルの二重の厳重保護である。
資料室に入って左から三列目。上から三段目の左十五個目。警察官の個人情報が保管されている棚は、所属別に五十音順で並んでいる。指で追うようにファイルを探した。
｢…と、さ…し……あった｣
｢……真選組、っスか？｣
横目に返事をしながらファイルを手に取った。
江戸の武装警察真選組。新聞に大きく貼り出されることは多くても、内容は悪いものばかり。｢真選組、またやった｣なんて見出しで一面を奪うこともしばしば。最近では松平だけでは処理しきれなくなってきたらしく、真選組の解散を実行しようとしているお偉い様もいるとかなんとか。だが、こちらとしては腕のいい人材が失われてしまうのは大いに困る。どうしたもんか、と考えた結果導き出されたのはこれだった。
｢真選組を協力対象にして、潜入捜査を申し込んでくればいいんじゃない？｣
｢そりゃまた人任せな｣
お前が持ってきたことでしょう、と言ってやれば、言い返す言葉もないようななんとも微妙な顔で返された。
真選組隊士の名前が記載されたページを目でなぞる。監察はいるし、伊東が優秀だと口ずさんだ人材が居るとどこからか聞いた覚えもあった。
｢でもそれが得策っスよねぇ……ううん、でもなぁ、｣
｢うじうじしてる暇あったらさっさと行動起こしてきたらどうなの？見ててウザったい｣
がしがしと頭をかきながら悩み込む部下に選んだファイルを押し付けた。こんなちっぽけな事を一緒に悩んでやるほどできた上司でもないし、暇もない。自分が受け持った仕事ならば、最後まで責任持つべきだろう。
｢きちんとロックしてきてよね｣
｢………っあ、うっす｣
仕事戻るから、そう言ってこの場から立ち去ったものの後の事は目に見えている。どうせ私も一緒に捜査してあげるのがいつもの流れだ。
｢(ニコチンくさ)｣
服に染み込んでしまった煙草の香りがウザったい。
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作者名：ゆうひ | 作成日時：2019年9月25日 22時
