57：相容れない同音異義語たち ページ12
* Gr Side
──ﾊﾞﾀﾝ
不敵とまではいかないが､覚悟を決め薄らと笑んだアイツは何処か捨て身を承知でこの戦争に臨むつもりではないか｡
先程から俺は､そんな最悪な結末ばかり考えている｡
クリアから
「……」
ミチッと凭れ掛かったソファの背が悲鳴を上げる｡
左に着けた蒼玉のイヤリングは軟膏が程良く塗られており少々驚いた｡
──否､それ以上に無意識に自身のイヤリングを外した事の方が驚いた｡
造型､意匠共に自身のものと大差無いソレにそっと触れる｡
俺のものとは対称的に､銀を基調にしたフレームに､一際目を惹くサファイアが嵌め込まれたスタッドピアス｡あまり使われていないのにも関わらず､破損や腐食が見受けられないのは丁寧に扱っているからだろう｡
姿形が変わらないまま､それでいて傷ひとつ無く綺麗に残っていた｡
「大切にしているのか不要なのか､この有様じゃ判らんやろ……」
ふは､と小さく笑みが溢れる｡どうやら与えられたものを大切にするその性は健在のようだった｡
──ふとあの日に思いを馳せる｡
初めてアイツを見付けた日｡
美しくも残酷なこの世界を､どうにか自身の手で塗り変えたくて仕方が無かったこの俺に降り掛かった小さな希望の光｡
初めは単純にその屈強さに惚れ込んで仲間に引き入れたのだったが､後にとんでもない逸材だった事が判明する｡
その屈強さに加え頭脳明晰､振れない精神､そして何よりも､遭ってきたその境遇の数々｡
正に俺が捜し求めていた理想像そのものだった｡
しかし､それと同時に�狃�刃の剣�瓩世辰�｡それが現在のクリアの有様である｡
本当にアイツを引き入れて良かったのか｡
未だに見付からないその
ただ､この正念場は今何があっても超えなければならない｡
そう易々と弱音を吐いてなどいられない｡
そんな甘い考えが壊滅に追い込むとは解っているが｡
……だがもし､アイツが幾つもの死線を掻い潜り無事に帰って来る事が出来たら｡
何も彼も失う事無く､終戦を迎えることが出来たら｡
「その時は……アイツに似合うイヤリングでも贈ってやろうか」
俺は秘かに心に誓った｡
*
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作者名：Youtopia | 作成日時：2021年9月10日 22時
