仮婚。 (ページ12)

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１２話ページ12

．

｢はぁ、っはぁ｣

あれから何分こうして息を切らせながら走っただろう。

行き着いた先には視界一面の花。

まさにお花畑が広がっている

そんな綺麗に咲く花達を見て気付けば涙なんか止まっていた。

｢綺麗…｣

??｢だろ。｣

｢うおっ汗｣

ヒョコッと出てきて私の呟きに返事をする人。

??｢ふっ、失礼だな｣

｢いや、ごめん。なさい

急に出てくるからビックリして、｣

??｢まあいいけど。｣

この人…

暗闇だからよく見えないけど月の光でうっすら見える顔。

多分、この家に居るってことからしてあの糞男の弟っていう人。

名前…なんて言うんだろう…

??｢何。見過ぎ。｣

｢あ、ごめん！！！｣

こちらを向いてもないのにそれに気付く程、彼を無意識に見ていた。

??｢何でさ、泣いてたの …｣

少し言葉をつまらせながらそう聞いてきた彼。

あー！！もう！忘れてたのに！！！

｢あぁ…(笑)

あれは…｣

??｢やっぱいい。

話すな。｣

｢え…？｣

何を思ったか私の話を遮る彼。

そっちから聞いてきたくせに。

｢…。｣

私は大人しく喋るのをやめた。

･

･

･

少しの沈黙。

二人で並んで花を眺める。

でもこの空気感…嫌いじゃない。

??｢…１個だけ教えといてやる。｣

｢はい？｣

｢3年我慢しろ。そしたらお前は自由だ。

それまで…

頑張れ。｣

それだけ言って去ろうとする彼。

｢え、ちょっと！！

何？｣

??｢……｣

彼は私の声に足も止めずそのまま暗闇の中へと消えていった。