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「ローア家、か」

 保健室へ見舞いに行く少し前の事。ワタソンはうーんと唸って、頭を傾げていた。

「確かにローア家の領地は星辰草が生息するのに適した気候だし、ワインの生産が盛んとも聞いた事がある。……ローア家が人間界と関わりがあるって話は知らないけれど、ちょっと気になるね」

 ああ、それから。

 ワタソンはそう続けながらロレッタを見る。ガリオンとはまた違う色合いをした赤い目が、彼女を捉えた。

「ありがとう、ロレッタ君。この事は私達大人に任せていてくれたまえ」

 柔らかな物腰だった。毒気のない、優しい雰囲気。しかし、ロレッタは彼が何を言いたいかを理解した。

 もうこの事に関わるな、と。ワタソンはそう言いたいのだ。

 ワタソンがそう言うのはよく分かる。ロレッタは生徒なのだ。しかも、純血のキャロヴェッタ家時期当主でもある。怪しい一族のいざこざに巻き込むわけにはいかないだろう。

 ロレッタにもそれは分かっていた。分かっていたが、だからといって納得ができるわけではなかった。ワタソンのその言葉は、ガリオンを見捨てろと言っているようなものである。強い怒りが込み上げる、というような事はなかったが、それでもモヤモヤとしたような心の澱みは取れない。理性と感情は別物なのだ。

 ロレッタのそんな考えを見て取ったのだろう、ワタソンは続けた。

「その生徒……ガリオン君の身の安全も守るよ。大切な生徒なのだからね。だから、安心してくれ」

「……ありがとうございます、先生」

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作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2022年5月2日 12時

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