八話 ページ8
『うん似合ってるよ。可愛いね』
や「きゅいきゅい♫」
首元の鈴を鳴らして、嬉しそうに駆回る狸ちゃん。
主要キャラの使い魔なだけあって包帯や傷薬は勿論、可愛い鈴だって簡単に生成してみせた。
可愛い上に優秀だなんて惚れちゃう。天使かな?
そんな狸ちゃんのおかげで、場内の怪我人は殆ど手当出来た。
改めてお礼を言えば、狸ちゃんは少し悩んだ素振りをして何かを生成する。
『(これは……輝星バッチ!?)』
渡されたそれは学園の代表的人物だけが持つ黄金のバッチ、輝星バッチだった。
確か狸ちゃんは一度触れた物なら何でも生成できるんだっけ?
きゅきゅ、と鳴いた狸ちゃんは今か今かとその瞬間を待っている。
私はピンを開けると、そのまま狸ちゃんのスカーフに付けた。
や「きゅ…!?」
『ありがとう、手伝ってくれて』
ヨシヨシと頭を撫で、大人しくなった狸ちゃんを全力で愛でる。
こんなお礼で良いのかな、と疑問を抱くけど、狸ちゃんの尻尾はきゅっと丸まり喜んでくれてるので問題はないと確信した。
可愛いすぎるよこの子…!!
『おかげでこれだけ多くの人を手当できたよ、本当にありがとう!』
や「……きゅ?」
『うん、可愛いよ!この世で一番可愛い!!可愛い上に魔法が出来るなんて尊すぎる!!!」
や「きゅうきゅう!」
そうでしょ!そうでしょ!、と胸を張る狸ちゃんは誇らしそうにプスッと鼻息荒くした。
あかん、むっちゃ可愛ええ。モフろ。
そう思い伸ばした手は空を切る。
気づけばあの狸ちゃんは消えてしまっていた。
坂「何で叫んでたん?……て、うわ!何これ!?」
志「あー…忘れてたわ。すまん」
ようやく帰って来た二人は場内の惨状に苦い顔をして、怪我人を運び始める。
志麻さん忘れてたんだ…
もしかして、狸ちゃんはこの事を教える為に来てくれたのかな。
狸ちゃんがいた辺りを眺めながら、ありがとう、と静かに呟いた。
や「きゅー!」
?「お帰り、やまだ。まーしぃどうだった?ちゃんと手加減出来てた?」
や「きゅ!」
?「そっか、サンキュ。…ちょっと待ってろよ、もうすぐで出来るからな」
首を横に振った相棒を優しく撫で、クッキーを焼く茶髪の青年。
ふと違和感に気がつく。
?「やまだ、何かあった?随分機嫌が良いみたいだけど」
や「きゅー♫」
?「"教えなーい"ってお前なぁ……」
上機嫌な狸は青年の肩できゅきゅ、と笑う。
裏返して付けたスカーフの裏でバッチはきらりと光るのだった。
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作成日時:2022年1月17日 5時