四十話 ページ40
博「センラ目が覚めたか。良かった、すまんな。儂にはコレしか出来んのじゃ」
事故にあって人間の"センラ"は死に、博士が人形の"俺"を作ってくれた。
初めは感謝したが、その事故の原因が博士であり、証拠を消す為に俺を作った事を知れば喜びは怒りに変わった。
しかし人形だと気付かれれば俺は捨てられ、家族も権利も…Aとも会えなくなる。
秘密を隠し、嘘をつき、俺は人間のセンラとして生きる事を選んだ。
博「センラよ、彼女が出来たのか?」
セ「…A、早く家に帰って」
『…知り合い?警察呼ぼうか?』
セ「大丈夫、バイト先の人だから」
『そっか!じゃあ、また明日ね!』
ある日家の前にいた博士。
一緒に下校していたAを帰らせ、何の用だと睨む。
博「そう怖い顔をするな、悪い話じゃない。報酬も沢山貰えるぞ、良い話じゃ」
セ「興味ない。帰れ」
博「人間に戻れる、と言えば良いか?」
セ「……っ!?」
博「儂の頼みを聞けば人間に戻してやろう。人になればあの子にも人間として向き合えるぞ」
人としてAと接する事が出来る、これだけで俺はその誘いに応じてしまった。
後日工場にて体を解体され始めて、ようやく博士が俺を処分しようとしている事に気が付いた。
博「話が違う?いや人間にはしてやるぞ、お前の恵まれた体を儂の物にするがな」
博「あの娘も可愛いのぅ。お前の代わりに沢山可愛がってやる、さぁようこそ我が新しき肉体!」
意識が途切れ、その後の事は覚えていない。
気が付けば俺は人形のまま、五体満足でその場に立っていた。
工場には人の気配がなく、解体された日から数日が立っていて、俺は行方不明だったらしい。
…未だ博士は逮捕されておらず、この街の何処かに潜んでいるかもしれない。
Aを守る為に、俺が人になる為に、何としてでも博士を探し出して捕まえてやる。俺が必ず。
*
工場に着き、二人は絨毯を降りる。
坂「センラー!どこやー!」
志「あ、あの黄色いのは!?」
坂「センラ!」
暗い工場内で佇むセンラに声をかけて近付いていく。
しかし振り返った彼の様子に二人は立ち止まって眉を寄せた。
センラの姿だが、雰囲気がまるで別人である。
坂「センラ…?」
セ「…坂田どうしたん?俺は別に普通やで?」
志「…普通の奴は普通なんて自称しねぇ。お前誰だ」
志麻の睨みに微笑んだ彼の胸の宝石は怪しく輝き、工場内を照らす。
黒光の中に黄色い光が見えた様な気がした。
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作成日時:2022年1月17日 5時