episode 7 ページ7
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「ほな、行こか〜♪」
すっかりご機嫌になった康ちゃんに連れられて、綺麗で豪華なホテルを練り歩く。
今日は貸切やから、当たり前のように館内に人気はない。
妙に静かな雰囲気の中で、優雅な音楽が遠慮気味に流れてる。
「あっ、おった!」
広いな〜なんてありきたりな感想を連呼し続けてた康ちゃんが急に立ち止まったかと思えば、前の方を指差してそう言った。
その指が差す方向をよく見れば、広々とした中庭に紫耀たちの姿があって。
「おぉ〜い!仲間連れてきたで〜!」
自分の存在に気づいてくれと言わんばかりに大声を張り上げる康ちゃんだけど、そんなんしてたらほんまに淳太くんにバレそうな気がして。
「ちょっ、しっ!声デカイって!」
慌てて康ちゃんの口を塞ごうとしたものの、
「おぉ〜!やっほ〜」
中庭の方からも能天気な紫耀の声が響いてきたから、もうどうしようもないと悟って伸ばしかけた手を引っ込めた。
左腕にはめた腕時計に視線を落とし、あと10分ぐらいしたら戻るか、なんて思いながら顔を上げる。
ほんま一瞬目を離しただけなのに、目の前におったはずの康ちゃんは既に中庭のベンチに座ってて。
「…はやっ、」
思わずそんな言葉と、呆れたような笑いがちっちゃく漏れた。
「大吾〜っ」
お前も早よ来いと言わんばかりに俺の名前を呼んだ康ちゃんに、思わず顔が緩みながらも小走りでその声がする方へと向かった。
だからもうちょっと静かにしようや、なんて思いながら___。
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ナッチェル(プロフ) - 自分語りしてるようですみません...笑 何故人を思う気持ちは曖昧になってしまうんでしょうかね...今回は書かれていない所や立場毎の揺れも見れた気がします。次に私は何を感じるのかな。今からワクワクです。これからも応援してます! (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 親友は今でも大親友なのですが笑、私の中であの時の寂しい苦しい温もりを求める気持ちは、曖昧で、確かに存在してたな、と振り返れたし、スッキリしました。時系列や立場、ニュアンスが違う所も様々あると思いますが、これまでより感情移入しました。なんか、長々と (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 怖いほど書かれていました。あぁ、私は「もっと求めてほしくて、もっと一緒にいたかった」んだ、もっと求めてくれると思ってた、最後まで敵わなかった、って咀嚼出来ました。彼への依存は悩んでるうちにまぁいいや、ってなってお気に入りから連絡先を消して吹っ切れたし (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 行ったり。大抵私からの誘いでした。あの時の「好き」とは違う感情で接してて、でも名前はつけられなくて、まさに「曖昧」でした。依存してたんだと思います。輪郭のなかった何かが吾君編を読んで少し見えたんです。大吾の心情、みぃさんのあとがき。当時の気持ちが (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 私はずるかったなと改めて...。自分が賢いとは思いませんが、人の気持ちに気づいてしまう部分があるのでそこに共感したというか...その後2人は付き合って割とすぐ別れるんですが(おい!笑)、彼と私は仲良いままやり取りがダラダラと続いて、たまに2人で遊びやご飯に (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃ | 作成日時:2020年9月19日 12時