episode 34 ページ34
＊
「………部屋、行こか」
泣き疲れた姫ちゃんを、車から降ろして部屋へと連れて行った。
部屋には入らんようにしててんけど、こればっかりはしゃあない、って自分に言い聞かせて。
「ごめん、」
「なんで謝るん？」
別に、なんも悪いことしてないやん。
「………だって、」
「ん？」
ベッドに座らせた姫ちゃんの足元に膝をついて見上げると、彼女はまた瞳に涙をいっぱい溜めて口を噤んだ。
言葉にできひんのか、言葉にならへんのか。
どっちかなんてのはわからへんけど、それやったら言わんくていい。
無理やり口にした言葉のせいで、また傷付く必要はないから。
やから、
「別に、俺はこの関係でいいから」
代わりに、俺が言うな。
「寂しくて我慢できひん時用でええんちゃう？」
ほら、それならいいやろ？
“ もし誰かの熱が欲しくなったら、俺んとこ、おいで ”
そう思ったのは、俺やから。
「……ごめ、っ、」
「だから謝らんでええから、」
「だって、あたし、ずるいな…って、」
あぁ、もう。そんな顔せんとって。
ずるくてもいいやん。
俺が、したくてしてんねんから。
「俺がいいから、いいの」
そう言って、思わずその華奢な身体を正面から抱きしめた。
ずっと、我慢してたのにな。
髪を撫でるだけにしとこう、って。
それ以上触れたらたぶん止まらへんから、って。
でも、もう無理そうや。
「………、」
少しだけ、自分から彼女の身体を離した。
俯く姫ちゃんの顔を覗き込むと、潤んだままの瞳に俺の顔が映り込むから。
「……っ、」
吸い寄せられるように、唇を重ねた。
彼女が、拒まなかった理由はわからへん。
逃げようと思ったら、逃げれたはずやのに。
でも、
それでもいい。
全部、俺が悪いから。
全部、忘れてくれていいから。
それでもいいから…
なぁ、お願い。
一度でいいから、俺を見て＿＿＿。
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ナッチェル(プロフ) - 自分語りしてるようですみません...笑 何故人を思う気持ちは曖昧になってしまうんでしょうかね...今回は書かれていない所や立場毎の揺れも見れた気がします。次に私は何を感じるのかな。今からワクワクです。これからも応援してます！ (2020年10月3日 0時) (
レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 親友は今でも大親友なのですが笑、私の中であの時の寂しい苦しい温もりを求める気持ちは、曖昧で、確かに存在してたな、と振り返れたし、スッキリしました。時系列や立場、ニュアンスが違う所も様々あると思いますが、これまでより感情移入しました。なんか、長々と (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 怖いほど書かれていました。あぁ、私は「もっと求めてほしくて、もっと一緒にいたかった」んだ、もっと求めてくれると思ってた、最後まで敵わなかった、って咀嚼出来ました。彼への依存は悩んでるうちにまぁいいや、ってなってお気に入りから連絡先を消して吹っ切れたし (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 行ったり。大抵私からの誘いでした。あの時の「好き」とは違う感情で接してて、でも名前はつけられなくて、まさに「曖昧」でした。依存してたんだと思います。輪郭のなかった何かが吾君編を読んで少し見えたんです。大吾の心情、みぃさんのあとがき。当時の気持ちが (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 私はずるかったなと改めて...。自分が賢いとは思いませんが、人の気持ちに気づいてしまう部分があるのでそこに共感したというか...その後2人は付き合って割とすぐ別れるんですが(おい！笑)、彼と私は仲良いままやり取りがダラダラと続いて、たまに2人で遊びやご飯に (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みぃ
| 作成日時：2020年9月19日 12時
