episode 6 ページ6
*
「……」
俺の影がその人に重なったと同時に、その人がゆっくりと顔を上げた。
そしたら、
「……えっ、」
俺を見上げたその顔が、一瞬Aちゃんに見えて。
思わず、動揺してもうた。
「あっ、いや…」
久しぶりに感情が動いたような気がして、ちょっと焦りもした。
だからほら、口からは誤魔化すような言葉が漏れてきてる。
でも、よくよく見てみれば全然似てないねんけど…
「え、っと…」
1回動いた感情は、なかなか落ち着かへんくて。
ややこしいことに首を突っ込みたくなんかないのに、俺はまた、
「だい、じょうぶ…?」
そう、聞いてた。
「……だいじょう、ぶっ」
ふっくらした小さめの唇から漏れてきたのは、か細い声。
その声を拾うため、俺はまた一歩その人に引き付けられる。
「えっと、なんか…あったんですか?」
伏し目がちなその人の顔を覗き込むように、少しだけ屈んでそう聞いてみたら、
「………っ、怖かった……」
潤んだ瞳で、その人はそう答えた。
「怖かったって…」
一体何があったんだろう、なんて疑問を持ってみれば、次から次へと嫌な想像が頭に浮かぶ。
最近の俺やったら、かわいそうに…なんて薄っぺらい同情を寄せるだけやったと思うけど…
“ Aちゃんに似てる気がした ”
それだけの理由で、こんな風に立ち止まってるから不思議だった。
なんでかどうも放っておけんくて、
「とりあえず、こんなとこに1人でおるのは…」
危ないで、って声をかけようとした瞬間…
「わっ…!」
甘すぎる匂いが、至近距離で舞った。
一瞬のことすぎて、何が起きたかわからんかったけど…
トンッ、と胸元に重さを感じてやっと、女の人が俺の胸元に顔を埋めたことに気づく。
「…えっ?」
突き放すこともできんし、抱きしめる理由もない。
だから、どうしたらいいかわからんくて。
予期せぬ展開に思考が止まりそうになった時、
「…たすけてっ、」
か細い声が、また届いた。
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未来奈(プロフ) - なんだかとてつもなく頭を使った気がします。コメントも纏まらずめちゃくちゃでごめんなさい。すごく大好きな物語です。ありがとうございました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - 過去があって今があって、それで未来が創られていくという事。自分という存在は自分だけで存在している訳ではないという事。自分を重ねたり、別の誰かを重ねたり、古い記憶を重ねたり。。涙を流したり。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - なんて表現すればいいのかわかりませんが。。。一番最初の話からここまで、全て通しで読んだんです。そしたら、すごくいろんな感情が渦巻いたというか、動いた、揺さぶられたというか。自分の在り方について考えさられました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - そんな大きな、大事な事にいつもいつも気付かせてくれるみぃさん、みぃさんの書くお話に本当に本当に感謝です。みぃさんもお仕事やプライベート、お忙しいかと思いますが,このお話は私の大切な道標,心の拠り所です。みぃさんが楽しんで書いて頂きたいと思います(^^) (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - 自分が納得出来る答え、言い訳は見つかりませんでした。けどやっぱり道標になる言葉は今作の言葉でした。やっぱり好きなんやって。好きやから続けられるんやって。人が何て言っても良いんかなって。むしろそれが自分が頑張る一番大きい、誇れる理由になるんかなって。 (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃ | 作成日時:2017年5月30日 12時