お・ま・け 【2】 ページ42
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「ねぇ、紫耀」
「なに?」
「まだ聞いてもいい?」
「ふぇ?」
てっきりご飯の準備とかの手伝いを頼まれるんかと思ってたから、不意に変な声が出た。
「っあ、あぁ、いいよ」
俺の返事をちょっとだけ笑いながら、クロサキさんがね、とまた“ あの人 ”の名前を出したAちゃん。
「クロサギをしてる理由って何なのかな、って」
さっき俺が取ったお皿に野菜を盛り付けながらそう聞くAちゃんの横顔は、変な好奇心が滲んでるわけでもなくて、すごい穏やかやねんけど…
なんとなく、“ あの人 ”の裏とゆうか…人には知られたくない部分を見抜いてるみたいで。
「…昔、両親が詐欺師に騙されて、亡くなったって…それで詐欺師を全部喰い吐くそうとしてるらしい」
俺も結局噂程度にしか知らないその理由を、簡単に伝えた。
そしたらやっぱり、
「そっか…」
“ あの人 ”の過去の傷に共鳴するように、その瞳を小さく揺らした。
「はいっ、他に質問はありますか?」
相変わらずだな、なんて思いながらもなんとなく静かになった空気を変えたくて、意識的に声のトーンをあげて聞いてみる。
すると、
「ん〜…あっ、最後に1つだけいいですか?」
俺のトーンにつられるように、ちょっとだけ声を弾ませて片手を上げたAちゃんが可愛くて。
「どうぞ」
思わず顔が緩んだけど、笑顔で誤魔化して聞き返した。
「クロサキさんが言った、降ってくる、の意味って結局なんだったの…?」
最後の質問は、俺もずっと気になってたことで。
そういえば情報屋になってしばらくしてからやっと“ あの人 ”に直接確かめたんやっけ。
「なんか…最初は“ 雨が降ってくる ”って意味もあったらしいねんけど、」
「え、それだけ…?」
「いや、実際は“ 災難が降りかかるぞ ”ってのを伝えたかったみたい」
「災難…」
「うん。自分のことにもっと鋭くならんと避けれるもんも避けられへんぞ、って」
「なるほど…」
言葉とは裏腹に、まだあんまり納得できてないような気がして。
「自分のことそんなに鈍感やとは思ってないけど、気持ちの整理とか処理の仕方とかをね、もっと上手くならないかんなってのは思うわけですよ」
補足にもなってない補足をしてみたら、
「…頑張りすぎは、ダメだからね」
ふわり、優しい声と笑顔が返ってきた。
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未来奈(プロフ) - なんだかとてつもなく頭を使った気がします。コメントも纏まらずめちゃくちゃでごめんなさい。すごく大好きな物語です。ありがとうございました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - 過去があって今があって、それで未来が創られていくという事。自分という存在は自分だけで存在している訳ではないという事。自分を重ねたり、別の誰かを重ねたり、古い記憶を重ねたり。。涙を流したり。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - なんて表現すればいいのかわかりませんが。。。一番最初の話からここまで、全て通しで読んだんです。そしたら、すごくいろんな感情が渦巻いたというか、動いた、揺さぶられたというか。自分の在り方について考えさられました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - そんな大きな、大事な事にいつもいつも気付かせてくれるみぃさん、みぃさんの書くお話に本当に本当に感謝です。みぃさんもお仕事やプライベート、お忙しいかと思いますが,このお話は私の大切な道標,心の拠り所です。みぃさんが楽しんで書いて頂きたいと思います(^^) (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - 自分が納得出来る答え、言い訳は見つかりませんでした。けどやっぱり道標になる言葉は今作の言葉でした。やっぱり好きなんやって。好きやから続けられるんやって。人が何て言っても良いんかなって。むしろそれが自分が頑張る一番大きい、誇れる理由になるんかなって。 (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃ | 作成日時:2017年5月30日 12時