episode 29 ページ29
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自分も詐欺師をやってるからか、何か裏があるんちゃうかって疑ってる可能性はあると思って、
「僕もね、この方法を試してみたんすよ。ほら、」
俺は、しれっと財団名義の通帳を見せた。
まぁそれは、マスターに頼んで用意してもらった偽の通帳やけど…
数千万円ってゆう残高が記載されたその通帳を見て、シロサギが一瞬目を見開いたのを見逃さんかった俺は、
「これで所得税?ってのが25%ぐらい安くなるみたいっすね!」
ってことはなんぼぐらい浮くんやろ?と計算もできへんくせに指を折っていく。
シロサギの思考を、疑いからお金の計算に変えるために。
そして、
「どう、ですかね…?」
ちょっと遠慮ぎみに、あえて相手に選択肢を与えた。
プライドが高い人間ほど、こんな美味しい話を自ら蹴るなんてことはしないはずやから。
それに、
「急にすいません…無理にとは思ってないので、やっぱりこの話はなかったことに…」
そうやってあえて引いてみれば、
「待って、」
人間って本能的に、追いかけたくなるもんやから…
「なるわ、副理事に」
簡単に、食いついた。
シロサギは、俺の信頼を得たもんやと確信したんやと思う。
最終的には遺産相続の手数料やなんや言うて俺から金を取るつもりで、更には自分の税金まで安くなるからって…
「全財産、振り込んだわ」
安心しきったシロサギは、すぐに7000万ってゆう大金を専用の口座に振り込んだ。
でもそれも、マスターが用意してくれた“ 架空の口座 ”。
もちろんシロサギ用でもなければ、とある財団のものでもない。
つまりは、
「…まいどありっ」
シロサギの全財産は俺の手の中に収まったってこと。
それが、俺が初めて薄汚い詐欺師を“ 喰った ”瞬間やった___。
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未来奈(プロフ) - なんだかとてつもなく頭を使った気がします。コメントも纏まらずめちゃくちゃでごめんなさい。すごく大好きな物語です。ありがとうございました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - 過去があって今があって、それで未来が創られていくという事。自分という存在は自分だけで存在している訳ではないという事。自分を重ねたり、別の誰かを重ねたり、古い記憶を重ねたり。。涙を流したり。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - なんて表現すればいいのかわかりませんが。。。一番最初の話からここまで、全て通しで読んだんです。そしたら、すごくいろんな感情が渦巻いたというか、動いた、揺さぶられたというか。自分の在り方について考えさられました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - そんな大きな、大事な事にいつもいつも気付かせてくれるみぃさん、みぃさんの書くお話に本当に本当に感謝です。みぃさんもお仕事やプライベート、お忙しいかと思いますが,このお話は私の大切な道標,心の拠り所です。みぃさんが楽しんで書いて頂きたいと思います(^^) (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - 自分が納得出来る答え、言い訳は見つかりませんでした。けどやっぱり道標になる言葉は今作の言葉でした。やっぱり好きなんやって。好きやから続けられるんやって。人が何て言っても良いんかなって。むしろそれが自分が頑張る一番大きい、誇れる理由になるんかなって。 (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃ | 作成日時:2017年5月30日 12時