episode 28 ページ28
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「あの、1つだけお願いがあるんですけど…」
マスターに頼んだのは、理事長が顔を出さないような財団法人を探すこと。
そして俺はその法人のバカ息子に“ なりすまして ”、シロサギに近づいた。
黒く重たかった髪も切って、明るい色に染めた。
モノトーンが多かったシンプルな服装も、ちょっと高価なアクセサリーとかを重ね付けした。
新しいスマホも買って、偽名も作った。
バンド活動で稼いでたお金はだいぶ減ったけど、別にお金に執着してるわけじゃないから気にはならなんかった。
「すいません、遺産相続のことで相談したいんですけど…」
税務署職員になりすましてたシロサギは、そう声をかけた途端に目の色を変えた。
濃いめの口紅が塗られた口は緩やかな弧を描き、わざとらしくない程度の上目遣いで俺を見る。
それらしい専門的な用語をつらつらと並べる感じはさすが女優志望やな、と思ったけど…
俺の目には、その瞳の奥にある私欲がはっきりと見えた。
クロサキさんが言ってた薄汚いってこうゆうことやってんな、って思うぐらいに。
「もっと詳しく聞きたいんっすけど、」
よかったら今度ゆっくり、なんて人懐っこく誘ってみれば、シロサギは嬉しそうに頷いた。
「税金とかほんまにわからへんくて、」
バカなフリして相手を油断させて、
「でも色々と教えてもらってめっちゃ心強いっす、」
信頼してるフリして余裕を持たせる。
「またアドバイスもらってもいいっすか?」
そうしてシロサギと親しくなったところで、
「うちの財団の、副理事になりません…?」
甘い罠を仕掛ける。
「最近税金のこととか自分でも調べるようになったんすよ。そしたらネットに自分のお金を財団に寄付すると税金が安くなるって書いてあって!それでね、良いこと思い付いたんすよ」
良いことって?と興味を示したシロサギは、
「うちの財団名義であなた用の口座を作るとするでしょ?そこにお金を振り込めば、表向きはうちの財団に寄付したことになる。でも実際はあなたの口座なわけやから、あなたは税金が安くなるだけで損はない!」
なんかお礼がしたくてバカなりに考えてみました〜なんてヘラヘラッと笑ってみれば、
「そうねぇ…」
顎に手を当てて何かを考え出した。
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未来奈(プロフ) - なんだかとてつもなく頭を使った気がします。コメントも纏まらずめちゃくちゃでごめんなさい。すごく大好きな物語です。ありがとうございました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - 過去があって今があって、それで未来が創られていくという事。自分という存在は自分だけで存在している訳ではないという事。自分を重ねたり、別の誰かを重ねたり、古い記憶を重ねたり。。涙を流したり。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - なんて表現すればいいのかわかりませんが。。。一番最初の話からここまで、全て通しで読んだんです。そしたら、すごくいろんな感情が渦巻いたというか、動いた、揺さぶられたというか。自分の在り方について考えさられました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - そんな大きな、大事な事にいつもいつも気付かせてくれるみぃさん、みぃさんの書くお話に本当に本当に感謝です。みぃさんもお仕事やプライベート、お忙しいかと思いますが,このお話は私の大切な道標,心の拠り所です。みぃさんが楽しんで書いて頂きたいと思います(^^) (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - 自分が納得出来る答え、言い訳は見つかりませんでした。けどやっぱり道標になる言葉は今作の言葉でした。やっぱり好きなんやって。好きやから続けられるんやって。人が何て言っても良いんかなって。むしろそれが自分が頑張る一番大きい、誇れる理由になるんかなって。 (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃ | 作成日時:2017年5月30日 12時