検索窓
今日:11 hit、昨日:19 hit、合計:161,713 hit

episode 22 ページ22









「あいつも忙しいんだろう。世の中、詐欺師なんて腐るほどいるからな」









そう笑ったマスターが言った通り、クロサキさんに会えない日はまたしばらく続いた。







1週間ぐらいかな。







話が聞きたくてしょうがなかった俺にしたら、もっと長く感じたけど。









久しぶりに雨じゃなくて、細かい雪がヒラヒラと降った夜。









いつものようにあの路地裏を通ったら、廃ビルの非常階段に座る黒い影を見つけた。








「クロサキさん…!」







やっと会えた、と嬉しくて駆け寄ると、







「……お前さ、」







俺が来るのを知ってたかのように、ゆっくりと顔を上げて、








「本気でバカなわけ?それとも、」







“ バカなフリでもしてんの…?”







驚く様子もなくそんな言葉を投げてきた。







「えっ?」






「親爺の駒にされる気かって聞いてんだよ」






「いや、そんなつもりは…!」









「だったらなんであの店に出入りしてる!?」








「それは…」






マスターやクロサキさんが住む世界に足を踏み入れたくなったから、って言ったら…この人はどんな顔をするだろう。








やめておけ、って怒るかな。









好きにしろ、って呆れるかな。









クロサキさんの漆黒の瞳に、どんな感情の色が浮かぶのかを想像しながら答えたのは、









「…人間は面白い、って聞いたから」








そんな、好奇心丸出しの言葉。







「なんだそれ…」







「マスターが、言ってて。人間は面白い、って」







「………」







黙り込んだクロサキさんの瞳は、俺が想像してたどんな色でもなく…さらに“ 深い黒 ”に染まっていった。









その“ 深い黒 ”が示す感情が一体何なのかを探ろうとしてみても、あまりに複雑すぎるせいか全然わからんかった。








いつもなら、もしかして、なんて察しがつくのに。







感覚が鈍ってきたんかな。







「あの…、」








重い沈黙に耐えれんくなって、そういえば、と前から聞きたかったあの言葉の意味を聞こうとしたら、








「お前は、どうしたいわけ…?」








今度はそんな質問をされた。

episode 23→←episode 21



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (140 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2138人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

未来奈(プロフ) - なんだかとてつもなく頭を使った気がします。コメントも纏まらずめちゃくちゃでごめんなさい。すごく大好きな物語です。ありがとうございました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - 過去があって今があって、それで未来が創られていくという事。自分という存在は自分だけで存在している訳ではないという事。自分を重ねたり、別の誰かを重ねたり、古い記憶を重ねたり。。涙を流したり。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - なんて表現すればいいのかわかりませんが。。。一番最初の話からここまで、全て通しで読んだんです。そしたら、すごくいろんな感情が渦巻いたというか、動いた、揺さぶられたというか。自分の在り方について考えさられました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - そんな大きな、大事な事にいつもいつも気付かせてくれるみぃさん、みぃさんの書くお話に本当に本当に感謝です。みぃさんもお仕事やプライベート、お忙しいかと思いますが,このお話は私の大切な道標,心の拠り所です。みぃさんが楽しんで書いて頂きたいと思います(^^) (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - 自分が納得出来る答え、言い訳は見つかりませんでした。けどやっぱり道標になる言葉は今作の言葉でした。やっぱり好きなんやって。好きやから続けられるんやって。人が何て言っても良いんかなって。むしろそれが自分が頑張る一番大きい、誇れる理由になるんかなって。 (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みぃ | 作成日時:2017年5月30日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。