episode 22 ページ22
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「あいつも忙しいんだろう。世の中、詐欺師なんて腐るほどいるからな」
そう笑ったマスターが言った通り、クロサキさんに会えない日はまたしばらく続いた。
1週間ぐらいかな。
話が聞きたくてしょうがなかった俺にしたら、もっと長く感じたけど。
久しぶりに雨じゃなくて、細かい雪がヒラヒラと降った夜。
いつものようにあの路地裏を通ったら、廃ビルの非常階段に座る黒い影を見つけた。
「クロサキさん…!」
やっと会えた、と嬉しくて駆け寄ると、
「……お前さ、」
俺が来るのを知ってたかのように、ゆっくりと顔を上げて、
「本気でバカなわけ?それとも、」
“ バカなフリでもしてんの…?”
驚く様子もなくそんな言葉を投げてきた。
「えっ?」
「親爺の駒にされる気かって聞いてんだよ」
「いや、そんなつもりは…!」
「だったらなんであの店に出入りしてる!?」
「それは…」
マスターやクロサキさんが住む世界に足を踏み入れたくなったから、って言ったら…この人はどんな顔をするだろう。
やめておけ、って怒るかな。
好きにしろ、って呆れるかな。
クロサキさんの漆黒の瞳に、どんな感情の色が浮かぶのかを想像しながら答えたのは、
「…人間は面白い、って聞いたから」
そんな、好奇心丸出しの言葉。
「なんだそれ…」
「マスターが、言ってて。人間は面白い、って」
「………」
黙り込んだクロサキさんの瞳は、俺が想像してたどんな色でもなく…さらに“ 深い黒 ”に染まっていった。
その“ 深い黒 ”が示す感情が一体何なのかを探ろうとしてみても、あまりに複雑すぎるせいか全然わからんかった。
いつもなら、もしかして、なんて察しがつくのに。
感覚が鈍ってきたんかな。
「あの…、」
重い沈黙に耐えれんくなって、そういえば、と前から聞きたかったあの言葉の意味を聞こうとしたら、
「お前は、どうしたいわけ…?」
今度はそんな質問をされた。
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未来奈(プロフ) - なんだかとてつもなく頭を使った気がします。コメントも纏まらずめちゃくちゃでごめんなさい。すごく大好きな物語です。ありがとうございました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - 過去があって今があって、それで未来が創られていくという事。自分という存在は自分だけで存在している訳ではないという事。自分を重ねたり、別の誰かを重ねたり、古い記憶を重ねたり。。涙を流したり。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - なんて表現すればいいのかわかりませんが。。。一番最初の話からここまで、全て通しで読んだんです。そしたら、すごくいろんな感情が渦巻いたというか、動いた、揺さぶられたというか。自分の在り方について考えさられました。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: d1bb082a8c (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - そんな大きな、大事な事にいつもいつも気付かせてくれるみぃさん、みぃさんの書くお話に本当に本当に感謝です。みぃさんもお仕事やプライベート、お忙しいかと思いますが,このお話は私の大切な道標,心の拠り所です。みぃさんが楽しんで書いて頂きたいと思います(^^) (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
高一女子ジャニヲタ - 自分が納得出来る答え、言い訳は見つかりませんでした。けどやっぱり道標になる言葉は今作の言葉でした。やっぱり好きなんやって。好きやから続けられるんやって。人が何て言っても良いんかなって。むしろそれが自分が頑張る一番大きい、誇れる理由になるんかなって。 (2017年7月26日 16時) (レス) id: b4e78d5976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃ | 作成日時:2017年5月30日 12時