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70羽目【嵐の前の静けさほど怖いものはない】 ページ24

鬼兵隊襲撃から数日後


私たち真選組は、将ちゃんを伊賀へ送る船の護衛につくことになった


茂茂「……すまないな、A」

A「ん?何がヨ?」

茂茂「余は……大切な友に、傷つけてしまった」



将ちゃんは、私の痛々しい包帯まみれの体を見て悲しそうな顔をする



A「なんてことないヨ。私夜兎だし。こんな怪我はすぐ治るネ」

茂茂「……そうか」

A「さっ!将ちゃん、早く寝なさい!大丈夫。私と総悟がいるから」


船の中の一室に布団を敷いて、無理やり将ちゃんを寝かす


茂茂「……すまない」

A「もー将ちゃん!そーゆー時は『ありがとう』でしょ!」

茂茂「そうだな……。ありがとうA」

A「うん。どういたしましてヨ」



豪華な敷布団に将ちゃんが入り、静かな寝息をたて始めた頃

私も眠気を誘われて壁にもたれかかり、目を閉じた


──────────────



窓から差し込む夕陽に目を覚ます将軍

その顔は少しうかない顔をしている


部屋の自動ドアが音もなく開き、将軍の家臣が現れた



「将軍様、少しよろしいでしょうか」

茂茂「うむ。なんだ」


信頼している家臣の言葉。

疑いもせず近づいて、廊下に出た

──────────────




……う?

今、何か倒れる音が……


私が視線を将ちゃんの布団に移す


……えっ……!


A「将ちゃん……?どこ、行ったの……?」


そこにあったのは空になった布団

私は急いで廊下に出た



A「将ちゃんっ!…………?」


廊下に出た私を待っていたのは、幸福ではなく悲劇

部屋の扉の前に、血を吐いて倒れている将ちゃん


すぐに起こして体を揺らす


A「将ちゃん!将ちゃん!どうしたの?ねぇ!」

茂茂「……A」


ゆっくりと、少しずつ目を開ける

そこに写ったのはきっと、涙目の私の顔


茂茂「余は……ダメな将軍だ


……友を、こんなに悲しませて」


まるでもう死ぬような言葉

やだ……嫌だヨ……将ちゃん……!


A「嫌……嫌……まだ、将ちゃんと、缶蹴り……1回もしてない……

生きて……死んじゃやだヨ……!」


茂茂「……片栗虎とそよに伝えてくれるか」



私の声に気づいて走ってくる音が聞こえる

それが廊下の前で止まった時

将ちゃんは私の腕で息絶えた


「ありがとう」


そう、言葉を遺して

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作者名:珠優 | 作成日時:2018年3月15日 19時

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