はまった人が作るはまった人のための短編集 その8

なんて素敵なピカレスク…os ページ38

きっと俺は悪い男なんだろう。

そう思い始めたのはいつごろだったか。Aが大先生と付き合ってる事を知って、相談受けて。生まれてきた感情に嘘はつけなくて喉から出そうになる一言をいつ吐き出してしまおうかと機会をうかがっている。

今日も電話越しに聞こえるAの声は沈んでいて、そこまで悲しい思いをするならさっさと別れてしまえばいいものを、なんて思ってしまう。大先生のことだ、素直な彼女に僕には君しか居ないなんて無責任に言ったんだろう。

「そんな大先生のこと好きなん？」
「ん〜…どっちかと言えば付き合ってるから好きで居なきゃっていう感じに近いかもしれない。だって、彼氏さんなんだし…。」

正直ここまでお馬鹿だと思っていなかった。それはもう好きじゃないって言ってるのと同じじゃないのか。辛そうに、でも仕方ないとでも言うかのように大先生の話をし始める。その口ぶりは大先生のことをかばっているようで、段々と理解が出来なくなってきた。

なんでそこまでして大先生と付き合っているんだ。そしてなんで大先生はここまで想われてるのに気づかないんだ。聞けば今日も他の女と遊んでいるらしい。

「でもほら、いつも一度は連絡くれますし、お話もそれでしてますし…。」
「…おん。」

もう見ていられない。そう思った時には口が動いていて、止められなかった。

「もう、大先生なんてやめて俺にせえへん？」
「へ…？」

だいぶ前から思ってたことがついに言葉にでた。いつになったら俺のとこに来てくれるかと思ってたけど、もう我慢できない。
もう、困惑している声にすら愛しさを感じてしまうのだから、俺は俗に言う悪い男ってやつなんだろう。

でも、こんな役回りでもいいか。Aの悪い男になれるなら、こういうのも悪くない。

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