「君は悪くない」

17.違う自分 ページ18

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「『自分の実力を星で表す』……？ あ、ゼッケンに貼るのか」

　近未来的なスペースの中心にあるたくさんの星のステッカーと、ゼッケンを交互に見ながら呟いた。

　
　今日は12月6日。撮影初日だ。

　合格の通知が届いた後はあっという間だった。事務所の契約を更新して、プロフィールを書いて、番組から指定された曲を練習して。
　あと実家に連絡も。いきなり韓国で男としてアイドルをすると思ったら突然メンバーが亡くなり傷心状態で日本に戻ってくるなんてめちゃくちゃなことをして家族にはたくさん心配させたから、またKPOPの世界に行くと言うのはかなり緊張した。でも話を聞いた家族は至っていつも通りの口調で「そう」と口にしてから「きっとヨンジュくんも天国で喜んでるわ」と言ってくれた。そうだといいなと思う。でも、流石に98人の男の練習生と3ヶ月共同生活することになる、というのは言わなかった。言えるはずもないし、家族はKPOPに疎くてこの番組は見ないと思うのでわざわざ伝えなくてもいいと思う。



(うーん……3つかな)

　あんまり少なくしても兄さん達に後から色々言われる気がする。だからと言って自分の今の実力は星4つでもないので、ぺたりと3枚貼った。





　一分後に事務所の名前がスクリーンに出るのでいい感じに登場してください。
　そうスタッフの方にカンペを出される。いい感じとは……と思いつつも私はそれに頷いて、ふぅ、と息をついてから鏡をチラリと見た。そこには当然自分の姿が映っているのだけど、上下黒の衣装を身にまといメイクを施した自分は、やっぱり自分のようには見えなかった。

(そりゃそうだよね……)

　メイクなんてN͜͡umberが解散してから必要最低限することも無かったし、少しでも目立たないようにといつも野暮ったい眼鏡を掛けていた。髪だって寝癖を治すくらいしかしてなくて。服もシンプルで当たり障りないものばかりだったし、ヨンジュと開けたピアスも塞がらないようにはしていたけれど昔のようにお洒落としてつけることはなかった。


(でも。『俺』って……こんな感じだったっけ？)

　思わず首を傾げる。
　こうやって2年前のような格好をしても、アイドルだった自分とは何か——なんとなく違う気がする。


(一般人だった『私』とも、アイドルだった『俺』とも違うなら……自分は今、なんなんだろう)


　そう考えていいるうちに時間になってしまったので、ふう、と一息をついてから歩き出した。

　



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