拾肆−上弦の、参 ページ14
＊
＿＿キィィン
拳を刀身で防ぐ。鬼。桃色の頭髪をした、鬼。瞳には上弦 参とある。上弦の、参！！だから、あんなにも力が強大だったのだ。
「退け、お前じゃない」
首を横に振って否定をする。退かない。退くわけにはいかないのだ。
「弱い、弱いやつは嫌いだ」
流れるような、けれども速く、威力の凄まじい攻撃。それを刀でぎりぎり流す。一撃一撃が重く、相当練り上げられたものだった。顔に拳が当たりそうになり、避ける。少し掠っただけで、頬が切れ、血が流れた。中々再生しないのは、Aが疲弊しているからだ。
反撃しないと、死ぬ。脳が警報を鳴らす。
＿白の呼吸 参ノ型 黒風白雨
暴風雨のような技。荒れ狂う風のような鋭い斬撃が鬼の身体を切り裂き、その間に雨を模したような突き技が入る。けれど、けれど！素流を練り上げた相手と、未完成なAでは、圧倒的な差があった。
「ぬるい」
パキン、と刀が折られた。真っ二つに。余りにも容易く行われたそれに、冷や汗が止まらない。強い、強すぎる。今のAじゃ適わないことは見なくてもわかる事だった。それでも、時間を稼ぎたかった。あちらの状況が把握出来ていない事もある。けれど、あっちに行かせた時、皆が危険にさらされてしまうのだ。
「刀は折れたぞ？それでお前は何が出来る？」
攻撃。防御。攻撃。
どっ、と身体を蹴り上げられ、飛ばされた。嗚呼、こっちは。こっちには、皆が。Aはそう思ったが、もう、身体に力は入らなかった。眠たくて、眠たくて仕方がなかった。
＿＿＿＿＿ズザザザッ
そう音を立てて、背中で地を滑る。Aは、相当血を流してしまった。呼吸が浅く、けれども、少しでも動けるようになるために、呼吸をし続けた。全集中の呼吸を。
「A、A……っ？どう、したんだ、その傷」
「無事か、日向妹。君、傷が回復しないのか？」
「た、たぶん、ですが、A、疲弊、して、遅くなっているんだと、思います。」
「…そうか。日向妹、頑張ったな。乗客は皆無事だ。」
それを聞くと、Aはほっとしたように眉を下げ微笑んだ。しかし、忘れてはいけない。強い鬼が来た。それを伝えなければならない。
「れ、ごく、さ、お、おに、が、つ、つよい、お、」
−−おにがきた。そう言おうとした。けれど、何かが飛び出して来た音に遮られた。遮ったのは、あの鬼だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 193人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
