黒田くんと葡萄と小説 ページ4
「おはよう黒田くん。今日は私の方が遅かったね」
「おはよう夏目。今日はいつもより早く目が覚めてな」
初めて話した日から、朝は2人で話すようになった。毎日話すが話題が尽きることはなく、楽しくホームルームまでを過している。
「そういえばさ、昨日黒田くん凄かったね」
「昨日?…あぁ、葡萄の話か」
私が言いたいことがすぐわかったのか、黒田くんは頷く。
「そうそう、花言葉知ってる人って少ないじゃん?それに伊達くんと武田くんの喧嘩上手く止めてたし」
思ったことをそのままいえば、満更でもないような顔で「まあな」と返される。
「いつ殴り合うかってひやひやしてたから、安心したよ。ちなみにさ、実際の葡萄の収穫量1位ってどこ?」
「流石に殴り合いになれば肉山も止めただろうがな。山梨だ」
へぇ、と昨日結局答えを書けなかったノートに山梨By黒田くんとメモしておく。
「夏目は花言葉がわかるのか?」
「うん、わかるよ。全部知ってる訳じゃないけど、有名所は。花言葉って物語に使いやすいんだよね」
「物語?」
「うん、小説を少し。大したものじゃないけど、ネットで3年くらい書いてる」
そういえば、黒田くんは少し驚いたような表情をして感心したような声を上げる。
「すごいな」
「そう、かな」
「ああ、1から何かを作り上げるというのはそう簡単じゃないだろう。それを3年も続けているというのは、凄いことだ」
真っ直ぐな、純粋な賛辞になんだか照れ臭くなってくる。
「ありがとう。あんまり人に言ったことなかったし、褒められることもなかったから嬉しいな」
「もし夏目が良かったらだが、書いた小説を見せてくれないか?興味がある」
「下手だと思うけど、それでもいいなら」
「ああ、ありがとう」
「そしたら、URL送るね」
トークアプリの1番上にある黒田くんの文字をタップして、URLを送る。すると直ぐに既読がついて黒猫がありがとうと言っているスタンプが送られる。
「このスタンプ可愛いね」
「母さんが便利だから1つくらい持っていろとくれてな。母さん以外に使う機会が来るとは思わなかった。小説、家に帰ったら読ませてもらう」
明るい声でそう言われ、また嬉しくなる。まだ読まれたわけでも、感想を言われた訳でもないけど、書いた小説を読む初めての友達が黒田くんで良かったと思った。
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作者名:妙党 | 作成日時:2022年10月1日 15時