【本編】迷い犬の鬼殺奇譚・改【リレー小説】 (ページ42)

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.何なんだ【佐藤春夫/白井直】ページ42

俺が鬼とやらと戦っていた時、
一人の少年が木の上から降ってきた。

驚いて避ける。そして、話しかけてみる。

『おい、君、大丈夫か?』

だが、返事はない。
しかも、俺が見たところ、少年は、寝ている。
いびきが聞こえるのだ。

俺はもちろん大混乱。寝ているっていうのに何故動ける?
なにかの異能力か?

その時、蜘蛛がまた攻撃を仕掛けてきた。
しかし、今度は俺よりも少年に攻撃している感じがする。

俺がいては邪魔ではないかと思い、
一度2人(?)から距離を取る。

腕を組んで戦闘を見守る。
俺の敵を取られたような気がするむしゃくしゃした感情も
もちろんあるのだが、
それ以上に先程の少年に興味が湧いてしょうがない。
弟子にすればもっといい動きさせられるな、
なんてことを考える。

とりあえず戦闘を見守りつつ、仲間たちの下へ戻ることに
決めた俺は、感づかれないよう、そっと動いた。

『おい、大丈夫か?』

みんなに小さく声をかける。

「僕たちは大丈夫です。春夫さんは平気ですか?」

『全然問題ない。まだ動き足りないほどだ。』

そう答えると、クスリ、と笑う声が聞こえる。

『なんだ、夜霧。』

少し顔をしかめて夜霧を見る。

「いや、さすが佐藤だと思って。」

苦笑いしながらそう言う夜霧。なんだか癪に障る。
こいつとはこういうところが合わないんだ。

「それにしても、彼は大丈夫でしょうか。」

辻村が心配そうに少年と蜘蛛の方を見る。

「すごい戦闘能力、ですよね。」

ルーナも不思議そうに呟く。
俺は、先程の少年の様子をみんなに伝えた。

「は!?寝ていた!?」

珍しく夜霧が驚いた声を出す。俺はコクリと頷いた。

『いびき聞こえたし、なんなら鼻提灯できてたぞ。』

「そんなことが、あるんですか?」

みんな驚いている。
まったく、この状況といい、あの鬼とかいうやつといい、
不思議な少年といい、本当に何なんだ。

『あー、家の布団が恋しい··········。』

俺は、みんなに聞こえないくらいの声で、
だが心からそう言った。