私は、頭を下げた。 ページ10
授業中の遅い時間の進みはとても腹立たしかった。
もどかしさが私を包み、授業にまったく身が入らない。
ようやく時計の針が昼ご飯の時間を告げたころには、もう精神が興奮と疲労でくたくただ。
他のみんなが食堂に向かったのを確認し、私は帰る支度をした。
今日学校に来た理由は、全員にこの旨を知らせるためだけであって、授業なんて必要もない。
なら、伝えたあとも学校に残る必要がどこにある?
教科書など、売れるものは全部残していこう。
ロッカーのカギは開けておこう。
必要なものだけ持っていこう。
すべてを鞄に詰めて、私はロッカーを閉めた。
幾分軽くなった鞄に、無意識に笑みを深めた。
「…覚悟してろよ」
思わずつぶやいた自分の言葉に、笑ってしまった。
ゆったりと食堂の扉を開ける。
ざわざわと耳障りなほどうるさいそこは、一人の存在が入ってきただけのことに興味を示すことはない。目もくれない。
まぁ、どうでもいいけど。
私はしばらくそこに立ち尽くし、見回した。
目当てのテーブルが見当たらない。どこだろう。
…見つけた。
鼻歌を歌ってしまいそうなほど気分が高揚している私は、迷うことなくそのテーブルへ向かった。
そこには、楽しそうに笑いつつテーブルを囲む数人の影。
…あぁ、あの笑みを壊したいなぁ。壊せるんだなぁ。
自分の中の紛れもない破壊衝動に蓋をすることなく、ついにはそのテーブルにたどり着いた。
私の姿を確認した途端、笑みはすべて消えた。
代わりに私を睨む目の数々。
「…何よ?」
「何か言いたいことでも?」
取り巻きがガンを付ける。
私の視線は、ただ二人を見つめていた。
仲好さそうに腕を組んじゃって。私と付き合ってた頃は、先生に見つかったら…とか言いながら、一向に学校ではくっついてくれなかったくせに。
「…わ、私怖い…」
「…っ」
素晴らしい演技と、慌てて逸らされる目。
思わず笑みを浮かべ、私は自分の靴を脱いだ。
そのまま、テーブルによじ登る。
誰よりも目立つ、誰もかもを見回せる位置に立てば、ようやく少しずつ雑談がやんだ。
訝しげな、困惑の視線で包まれる。
「…」
無表情で私は口を開く。
紡がれる平坦な声。
「アイリーンとクリスの…例の騒動について。皆が私に謝罪しろと迫られるアレについて。私から話がある。…謝罪がある。聞きたい人は、今日の午後5時きっかりに私の家に来て。場所は××駅、○○ブロック35階のF。覚えきれなかったら、クリスに聞いて」
私は、頭を下げた。
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:
作成日時:2013年11月29日 22時