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「…泳がせといてやるよ。」 ページ42

Side 宇城 龍志
メキバキ、という音を響かせて、木々が大きく揺らいだ。
誰もがうわっなどという声をあげて、降り注ぐ葉っぱや枝を振り払う。

それと同時に、どさりという音を立てて女が空から降ってきた。

いまだに幼い顔立ちのその女は、俺らの計算通りの位置にきっちりと舞い降りてくれた。
それでももしものことがあり、俺は思わず駆けつける。

「A!」
「…ぅ、」

ぱらぱらと落ちる木屑に、煩わしそうに眉を寄せたA。
意識こそはないが、どうやら別状はなさそうだ。
それでも念のためということで、すぐに闇医者に回せるようにしっかりと車を手配してある。

俺は首元と太ももの下に手を差し入れ、力を籠めて持ち上げた。
世間的いわゆるお姫様抱っこというやつだが、実は重力の分配的な問題で俺にとってこの抱き方が一番抱きやすい。

「テメェらは、後片付けしとけ。近いうちにこいつのクラスメートが死体を見に駆けつけてくるだろうから、急げよ。証拠を残すな。」
「ッス!」

口々に了承の声を聞き、俺はゆらりと歩き出す。
手元にあるずしりとした重さとわずかな温かさが、こいつがまだ生きていることを知らせてくれた。

雄人の案内で、近くに停めてある車のもとへたどり着く。
後部座席のドアを開けさせ、横にして寝かせてやった。

「じゃあ俺、後片付けの手伝いしてくるッス!」
「わかった。こいつは、例の病院に送っとくから、そのあとマスターんとこな。」
「はいッス!」

びし、とどこぞの警官のように敬礼をした雄人を傍目に、俺は運転席に乗り込んだ。
車のキーを差し込めば、エンジンがかかって心地いい揺れを感じた。
ルームミラーをいじりながら、鏡越しにあいつの寝顔を見てみる。

虫一つ殺せなさそうな顔だ。
だが実際は、いじめられただけでここまでやりやがった。
ものすごく、不思議な奴だ。

「…お前のクラスメートが、そんなに大切だったのか?」

答えが返ってこないことなんて知ってる。
それでも俺は、思わず問いかけていた。

誰にも依存しない、飄々としたように見えて、まるでペットみたいに飼い主に癒着しやがって。

「だから面白ェんだよな。」

まるでどこかの三流俳優の台詞のようだ。
そんなクサい台詞を残して、俺は車を走らせた。

高速道路を走らせる車の中の静寂。
耳を澄ませばわずかに聞こえる寝息が心地いい。
まるで幼い頃を思い出させてくれるような、懐かしさに陥っていた。

「…泳がせといてやるよ。」

ぽつりと呟いた。

「…自傷か。」→←本当は。



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作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:   
作成日時:2013年11月29日 22時

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