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「……なぁ。」 ページ28

「…あんたは、どう思うんだよ。」

思った以上に掠れた声が出てきた。
この声は恐怖からなのか、まだ愛してもらえるという期待からなのか。
こんなぐしゃぐしゃになってもまだ期待しているのだろうか。
分かっているはずなのに。

――もう手遅れだって

否定しなかった私に対して、クリスは驚きにばっと顔を上げる。
その顔は見開かれ、口を堅く結んでいる。
そして、その瞳はじっと私を見つめてきた。

ねぇ、君が震えてるのはどうして?
……怖いのかなぁ?私が。
でも震えるべきは私だよね。私のはずだよね。

努めて冷静にしている表面。
怒りや嘆き、悲しみや後悔、そして恐怖で渦巻いてる内面。
もう、不安定すぎて倒れそうだ。

きっと分かっているんだ。
一年も一緒にいたんだもん。

私は震える足を叱咤して椅子から立ち上がった。
わずか5メートル程度の距離。
私たちは、ようやく向き合うことができた。

私は、ようやく今、自分の真実を見つめることができた。

私は本気だ。
その一心で、私はクリスを睨んだ。

「ッ、駄目だ!!」

私の意志が伝わったのか、突然声を張り上げて言った。
その声に、しょうもなく私の肩は震えてしまった。

それでも、何とか崩れずに済んだ。

「…どうして?」
「死ぬなんてっ、絶対に駄目だ!!」

その言葉に、一瞬でみんながざわついた。
アイリーンの表情を見てみたかったけど、クリスの影に隠れて見えない。
驚きに満ちてたらいいなぁ。恐怖に歪んでたらいいなぁ。
後悔に満ちた顔をしていたらいいなぁ。

皮肉だよ。
崩れ落ちそうな自分を支えてくれているものが、
下で頑張っている彼らと、
歪んだ願望、それだけだなんて。

「…俺が、死にたくて死ぬとでも?」

ゆっくりと見上げれば、ばちりとクリスと目が合った。
今度は逸らされることはない。
意味を図りかねているクリスを見て、私は続けた。

「…死ぬ以外の選択肢を全部消していったのは、あんたらだろうが。」

ゆっくりとなぶって
どれだけ訴えても結果は同じで
誰も耳を傾けないどころか、馬鹿にされてけなされて
直接的なものじゃなく、じわじわと端っこまで追い詰めて
追い詰められた挙句、逃げられないように固められて
心をじわじわ侵食していって挙句、
ひょっとして自分が悪かったんじゃ、と自分を責めてしまった。

そこまで追い詰めていったのはいったいだぁれ?

「なぁ」



一体どうして
何のために


震える拳を糧にした。

私は再び問うた。


「……なぁ。」

「――何なんだよッ!!!」→←こんなになっても私、まだ愛したりなかったんだ。



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作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:   
作成日時:2013年11月29日 22時

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