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ごめん。 ページ19

鞄の中から鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。
力を込めて右へと回すと同時に、押しながら扉を開く。

母は、今日は友人の家にいるから少しだけ遅くなると言っていた。
父は仕事で、大抵毎週水曜か木曜からしか家に帰らず、そのまま日曜までずっと滞在、月曜から家を出る…というサイクルを繰り返している。
姉は一人暮らしをしていて、夏休みあたりにしか返ってこない。
だから今日がちょうどいい日だったんだ。

9月27日、水曜日。

この日、私は復讐を決行する。



ベランダに出て、下を見下ろしてみる。
そこは木々が所せましと生い茂っていて、地面が見えない。
ただ一点、私はその一点を見つめる。

その木々の下では、おそらく皆が準備をしてくれているんだろう。
ここは35階。ちょっとでも間違えれば即死なんだろうなぁ。

ちゃんと生き延びれるかな、私。

生き延びれても後遺症とかいっぱい残っちゃったりして。
全身麻痺だとか、機能障害だとか…足だとか腕だって、普通の人みたいに過ごせることは無理で。
そんな生活、むしろ殺してくれって言うようなものじゃないか。

だから死ぬのは怖いんだ。
だから自 殺はしちゃいけないんだ。
一つの尊い命を無駄にするだけじゃなくて、失敗する可能性がすごく高いから。

「…でももう、やめるのには手遅れだよなぁ。」

なんで人間って、最後の最後にようやく怖いって思いだすんだろう。
なんで直前まで恐怖を感じないことがあるんだろう。

だから嫌だなぁ。

ネットで調べた5点着地とか、どうすんのよ。
あ、でも木々がクッションになっている上に、多分下にさらにクッションあるから死なないかな。
死なないよね。
逆にクッションのバネで飛ばないかな。

馬鹿な考えが頭に浮かんできて、私はベランダの手すりをしっかり握ったまま膝から崩れ落ちた。
これでもう最後だ。

本当に、最後なんだ。

遺書はもう二通ともパソコンの中に保存した。

マスコミへのメールは、私が飛び降りる瞬間に龍志が送信してくれる。
その後携帯は、家のメールボックスにでも入れておこう。

「…お母さんに、これ以上迷惑かけたくなかったなぁ。」

膝に顔を埋めたまま、私は呟いた。
悲しいんじゃない。
どこか空白の感情が胸の中を渦巻く。
辛くはない。
恐怖はあるけど。

「…ごめんね…親不孝者で」

乾いた笑いを漏らした。
強い風が私の髪をなびかせる。

涙が出そうで出ない。
我慢しているから出させない。

「私が我慢するから大丈夫…。」


ごめん。

ざまぁみろ。→←後戻りはできないんだから。



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作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:   
作成日時:2013年11月29日 22時

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