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棚から牡丹餅。 ページ17

アンティークな古時計に目をやればもうすぐ4時を指す頃。
金の色をした眩い振り子がゆっくりと時を刻む。

「…あ、そうだ。」

眠そうに机に突っ伏してた私がいきなり起き上がったので、店内中の人という人が私を見つめてくる。
え、ちょっと待って緊張するなぁすいませんでした。

普通のお客さんたちに頭を下げてから、私は龍志とマスターに向かって話しかける。
他の不良の人たちは、私の復讐の作戦の準備に取り掛かってるみたい。
私が企てたことなのに、こんなぐたぐたしてていいのかな、とつぶやいたらいいんだよと龍志から即答が来た。

「あのさ、一番重要なことを忘れてたんだけど。」
「なんだ。作戦に穴でもあるのか。」
「ないけど、作戦のあとの話。」

携帯をいじっていた龍志が、携帯から目を離し私を見つめてくる。
マスターも、洗い物の手を止めて、私を見てきた。
再びテーブルに突っ伏したままの私は、なんとなく気まずい。

「…私は“死んだ”ことになるんだから、家には戻れないじゃん。」
「……あー」

納得したようなトーンで龍志は声をあげた。
私は俯いて、目の前に置いてあるバニラフラペチーノの容器を見つめた。
今や中身は空っぽで、水滴だけがテーブルに水たまりを作っている。

「住むところ…とか、バイトとか…働くとこ、アテ…ない?」

なんでこんな重要なことを今まで思いつかなかったんだろう。
まさか、自分も忘れてしまうとは思わなかった。

龍志とマスターは顔を見合わせて、また私を見てくる。
何だろうこの気まずい空気。
カフェの他のお客さんは既に、自分のことをやっていてこちらに聞き耳すら立てていない。

「…じゃあここに住めばいいじゃねぇか」
「…え?」
「マスターの家はこの奥で、俺らも時折泊めてもらってる。バイトもここですれば?」

私は呆気の表情でマスターを見る。
マスターは既に洗い物を再開していて、私の視線に気づくとにっかり笑ってくれた。
その笑顔の眩しいことったら。
白い歯が覗いて、光が反射して光っていそうなイメージだ。

「…いい、んですか?」
「最近はこいつらがたまり場にしてるおかげで雇う余裕も出来たし、一人でここに住むのは随分寂しいからな。娘でもできると嬉しいぜ。」

まるでお父さんみたいなことを言いながら温かい言葉を放ってくるマスター。
私は感動と驚きで開いた口が塞がらない。言葉もなかった。

「…えっと、じゃあ…よろしく、お願いしま…す?」
「おう。大歓迎だ。」

棚から牡丹餅。

後戻りはできないんだから。→←ケチャップポテトもおいしかったです。



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作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:   
作成日時:2013年11月29日 22時

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