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五十七 ページ7

坂本が目を覚ますと、静かに眠るAがすぐ側にいた。

小さく白い手に坂本の指が絡んでいて、白い肌には赤い花が咲く。


(嗚呼、幸せじゃあ)


さらさらと髪を撫でていると、Aの目がうっすらと開く。
まだぼうっとしているようで、虚ろな瞳。
坂本はそんな顔すら愛おしく感じていた。



「おはよう、A」



そう声をかければ、Aは何も纏わぬ身を見て、坂本に背中を向けた。



「…おはようございます」



そうぼそりと呟き、溜息をついた。

そんなAを後ろから抱きしめると、くすぐったそうにAはもがく。

 

「何を落ち込んどう」



「別に落ち込んでませんよ…ただ、判断が軽率すぎたな、と」



「そうかあ。良くなかったか…」



「そう言ってる訳じゃ…」



「じゃあ良かったんか」



そう悪戯っぽく笑って言えば、Aは坂本の方に振り返り、口を手で塞いだ。

余計なことを言うなと不満げな顔で見るAの掌を、坂本がぺろりと舐めれば飛び跳ねるようにして手を離した。



「やっとこっち向いたの」



小さな身体を坂本が抱き締めた。
Aは抵抗することなく、それを受け止めた。




「A…好きぜよ」





「…それは、夜に、いっぱい聞かせて貰いました」





Aの首元にある別の男の跡に触れる。
その上からまた新しい跡がついていた。




「身体だけやなか。本当におまんが好きぜよ」




「それは、凄く感じてます」




「何度だって好きだと言ってやる。じゃが」




その言葉にAはぴくりと動く。

坂本は赤いAの唇に触れる。




「坂本さ」




触れた指にもどかしいような顔で、Aは坂本を見つめた。

そこは唯一坂本が口付けなかった場所だった。





「これが欲しかったら、早く心を決めとうせ」





坂本はAの額に口付けを落とした。


.


.


坂本と艦長室を出、陸奥に出会した。
陸奥は艦長室からAが出てきたことを驚きつつも、酔って運ばれたことを船員に聞いたのか、真っ先にAに謝罪した。



「お姉ちゃん。またね。飲みすぎないようにね」



「またの」




「坂本さんも、また」




「待っとるからの」




その坂本の言葉に、Aは困ったような顔をして足早にその場を去っていった。




「坂本。昨夜わしに濃い酒を入れたな」




「さあ。何のことぜよ」



陸奥の問いに、坂本はわざとらしい素っ頓狂な声をあげた。

.

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Nattu(プロフ) - connyさん» 返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます!connyさんのご期待に添えるよう、楽しみながら書きたいと思います* (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 応援してます!続き楽しみです! (2021年2月11日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月10日 14時

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