七十壱 ページ19
.
「男がいるなんて聞いてねえぞ!掲示板に書いてやるんだからな!」
捨て台詞を吐いて男は去っていく。
突然の騒動にざわざわとしていた街は、次第に落ち着きを取り戻していた。
「助けて下さりありがとうございました」
「いいきに、いいきにー!にしても可愛い格好しとんのー!」
「あの、そろそろ降ろしてもらってもいいですか」
「ちくっと丈が短かかないか?」
Aの話も聞かず、坂本は抱えたまま話を続ける。
楽しそうにAを見ながら話す坂本に、Aはあることに気づき、懸想していた。
(やっぱり、この青い目が好きだ)
晴れた青空を映しだしたようなきらきらとした深い青。
船上で坂本の目を見た時を彷彿とさせる。
(どうしようもなく、坂本さんが)
きゅうと胸が締めつけられるような気がした。
「A?どういたが?」
坂本の声に、Aは我に帰る。
なかなか降ろしてくれない男の急所に一蹴りして無理矢理降りれば、背をくるりと向けた。
坂本は悲痛の声を上げ、地面でもがく。
「流石わしの妹ぜよ」
陸奥は嬉しそうに、鼻を鳴らした。
「というか、昨晩お姉ちゃん達出港したはずじゃ」
「ああ。その予定じゃったんじゃが、先方の都合が悪うなってな。あと数日いることになったんじゃ」
そう淡々と語る陸奥に、Aは耳まで顔が赤くなる。
その姿に、陸奥は
「言い逃げ失敗じゃのう、A」
と耳打ちして、口角を上げた。
.
.
吉原に戻り、服を着替え終わり、表へと出てみれば、坂本と陸奥は、日輪達と楽しそうにお茶をしていた。
送迎してくれるだけと考えていたAは、気づかれないようにと、静かに後退りを
しようとした時、
「客を連れてきといてどこに行く、A」
「ひえ」
目敏い月詠に見つかり、ずるずると引き摺られて表へと引っ張り出された。
日輪達は当たり障りのない会話していて、Aはほっと一息つく。
菓子を取り出し、
「送って貰ったんで、私の奢りです」
二人に差し出す。
「別にいらんぜよ〜。好きにわしら来とるんじゃから。
…それとも何か?口止め料か?」
楽しそうに笑う顔から一変、怪しくにやにやとする坂本と、じっとAを見つめる陸奥。
「口止め料にしちゃあ、足りんのう。あと三十本程ほしいところじゃな」
(この人達は…もう!!!)
茶化すようににやにやとする二人に、日輪達も眉を下げた。
58人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nattu(プロフ) - connyさん» 返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます!connyさんのご期待に添えるよう、楽しみながら書きたいと思います* (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 応援してます!続き楽しみです! (2021年2月11日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月10日 14時