七十 ページ18
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「気をつけて帰るようにな。どこで見ているかわからん」
「はい、ありがとうございました。また女子会しましょうね」
「だから俺は女子ではない」
真剣に否定する桂が面白くて、くくと笑ってAは背を向ける。
その背中に
「次会う時は、坂本の女という訳か。陸奥殿が何と言うか楽しみだな」
と、桂は楽しげに語りかけた。
Aはそれに、いーっと歯を見せた。
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日は昇り、街は賑やかになる。
吉原に戻る方向へと、足を運ばせていた。
繁華街を通れば、人は増え、Aに売り込みを入れる商人。
楽しげな街並みに飲まれるように、Aは歩いていた。
そんな時、ぐいと腕を引かれ、身を逸らせる。
「何っ?!」
突発的に伸びた手を振り解けず、後ろを見る。
「Aちゃん。ひどいじゃないか、昨日は僕がボディガードしてたのにいなくなるなんて」
昨夜、背後をついてきていたファン、否ストーカーである。
Aは力一杯振り解き、一発入れてやろうか迷ったが、これ以上誰も傷つけたくないという意思が働いていた。
「あの、やめて貰っていいですか。私と関わるのは、イベントの交流時だけにして下さい」
「何言ってるの。Aちゃんは僕だけのアイドルなんだ。そうだろう?」
「は…??」
けろっとした顔でさぞあたりまえかのように話す男に、ぞぞぞと背筋に寒気が走る。
「私は貴方の為にアイドルになった訳ではないですし、正確にいえばアイドルのバックについてる者です。お引き取り願います」
Aは腕を振り解き、眉間に皺を寄せ、睨みつけた。
その様子を見て、男は恐るどころか、携帯電話を取り出し、かしゃりと音を鳴らす。
「はあ。Aちゃんのその表情も素敵だよ…」
(なにこいつ、話通じないんだけど)
いよいよ武力行使しようと、した時。
「お。可愛い姉ちゃんが絡まれちょるのう」
「わっ」
身体が宙に浮く。
かちゃりと言う音がして、背後から銃口が伸びる。
「うちの大事な身内に手出さんで貰えるか、お客さん」
「うちの可愛い可愛いアイドルに手出されたら困るぜよー」
女は銃を突きつけ、男は楽しそうにAを抱え上げる。
「てめえら、Aちゃんの何なんだよ」
その反論する声に、二人はふっと笑う。
「Aの実の姉と」
「恋人候補じゃが何か問題でも?」
坂本と陸奥は、してやったりと口角を上げた。
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Nattu(プロフ) - connyさん» 返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます!connyさんのご期待に添えるよう、楽しみながら書きたいと思います* (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 応援してます!続き楽しみです! (2021年2月11日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月10日 14時