五十弍. 過去決別編 ページ2
帰ってきたAは明らかに落ち込んでいた。
自室に籠り、出てくることはなかった。
それを心配した日輪は月詠に部屋を行くように促した。
月詠が部屋に入ると、ぼうと外を眺めるAが抜け殻のようにそこに座っていた。
隣に座ると、Aは口を開く。
「もし、月詠さんに好きな人がいて、その人がアプローチしてきた時に、知られたくないことを知っている別の人が脅しながらアプローチしてきたときどちらを選びますか」
目には正気はなく、感情すら感じ取れなかった。
「わしだったら…それは好きな奴を選ぶ。所詮脅しじゃ」
その答えを聞き、Aはふと笑った。
そりゃそうかと眉を下げた。
「A、誰かに脅されとるのか」
「さあ。どうでしょう」
そう言ってAは月詠の言葉をはぐらかす。
月詠がAの顔を覗きこむと、その目はうるんでいた。
そして、ぽつりぽつりと言葉をこぼし始めた。
「私、子供がいたんです。でも、殺されちゃって。…それ見たら居ても立っても居られなくて。
私達を襲ってきた奴ら、皆、殺しちゃいました」
涙を流しながら、月詠の手を握る。
その手は震えていた。
「あんまり、覚えてないんです。気がついたら血の海になっていて。そんな過去を知らないで私を好きだと言ってくれる人に本当に申し訳なくて。だから、脅してくる相手に抵抗できなくて」
「じゃあ、その目の傷はその時に…」
月詠がそう尋ねれば、Aは静かに頷いた。
小さく俯くAを月詠は抱き寄せた。
「よく話してくれたな」
その言葉に、Aのこわばっていた身体の力は抜け、きゅう、と小さく月詠の袖を握った。
「それを一人で抱えてきたんじゃな。辛かったの」
「月詠さ」
「Aを好いた人間じゃ。どんなことを聞いても受け止めてくれるはずじゃ。わっちは今の話を聞いた上で、Aが好きでありんす」
月詠がにこりと微笑めば、Aは声をあげて泣いた。
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「なるほどね。そういうことだったの」
襖越しに聞いていた日輪は頷いた。
「Aちゃんには悪いけど。お節介かな」
日輪は陸奥の番号を押していた。
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「よう、金時」
「銀時だっつの。何の用だよ」
「白もじゃ達に頼みたいことがある」
陸奥達は万事屋を訪れていた。
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Nattu(プロフ) - connyさん» 返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます!connyさんのご期待に添えるよう、楽しみながら書きたいと思います* (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 応援してます!続き楽しみです! (2021年2月11日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月10日 14時