22話 ページ22
「そろそろ寝るか」
帰ってきた後少しまったりして他愛もない話をしてテレビみて、私がうとうとした時だった。
素直に頷くと、キヨ兄ちゃんに連れられて寝室へと向かう。
いつの間にか畳まれていた布団は綺麗に敷かれていた。
私はふかふかの布団に滑り込むと、キヨ兄ちゃんが笑った。
「カエルみてぇ」
キヨ兄ちゃんはベッドに座ると、伸びをした。
あ、欠伸した。かわいい。
その時、お腹にごりっとした硬い違和感。
あ、キヨ兄ちゃんに渡さなきゃ。
「キヨ兄ちゃん、これ」
なるべく顔を見ないようにキヨ兄ちゃんに箱を渡す。キヨ兄ちゃんは、素直に箱を受け取ると固まった。気まずい空気が流れだした為慌てて話を振る。
「き、キヨ兄ちゃんそれ使う相手いたんだね!いつの間出来たの?教えてくれたらよかったのに!」
少しテンションがおかしくなってしまったが、キヨ兄ちゃんの反応を盗み見る。
キヨ兄ちゃんの顔は、泣きそうなそれでいて困ったような笑顔だった。
私は心臓を鷲掴みにされたような感覚を感じた。キヨ兄ちゃんから目が離せない。
キヨ兄ちゃんはゆっくり口を開くと、ぽつりぽつりと言葉を言った。
「彼女じゃねぇんだ。ずっと好きな人がいて」
いつか、そうなれたらなって。
その顔はとても寂しそうで、抱きしめてあげたくて、でも体が動かない。
「そ、そうなんだ。上手くいくといいね」
キヨ兄ちゃんに、好きな人。
私は目をぱちぱちと瞬きすると、笑顔を向けた。
キヨ兄ちゃんは力なく、フッと笑うといつもの意地悪そうな笑みになった。
「お前はどうなんだよ。今までの彼氏とそういう事してねぇのか?」
「してないよ。だって彼氏自体作ったことないし」
キヨ兄ちゃんは目を見開くと表情が無くなり、ふーんと興味無さそうにいった。
その反応にズキリ、と心臓が痛む。
泣くな、だめだ。
「わた、しも…ずっと好きな人がいるから…」
突然部屋の空気がヒヤッと変わった気がした。
キヨ兄ちゃんをみると明らかに機嫌が悪い。
なんて言ったらいいのかわからなくて口を閉じた。
「あっそう。上手くいくといいな」
というと、キヨ兄ちゃんはベッドに潜り込んでしまった。
暫く動かずぼーっとしてると涙が流れてきた。
キヨ兄ちゃんを起こさないよう部屋の電気を消し、トイレへと向かう。
トイレのドアを開け、鍵を閉めるので精一杯だった。
私は崩れ落ち、声を抑えつつ泣いた。
私、これからどうしたらいいんだろう。
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*:まりな:*(プロフ) - 夢吏ちゃんさん» レスありがとうございます!通知溜まりすぎで…完結した時すぐに見れなくてごめんなさい!お気に入り作者にも登録しました!…結構前だけど…。これからも頑張ってください!1ファンとして応援してます! (2020年5月26日 16時) (レス) id: ce0c123210 (このIDを非表示/違反報告)
夢吏ちゃん(プロフ) - *:まりな:*さん» ありがとうございます…!!えへへそんなに褒めて貰えて嬉しいです!ありがとうございます!次作でもお会いできたら嬉しいです! (2020年5月25日 17時) (レス) id: 83cad32c9a (このIDを非表示/違反報告)
*:まりな:*(プロフ) - わああああ!完結おめでとうございます!はぁもう…泣きました。(これほんと)タメ口やばいと思いましたか?私は思いました。知らねぇよ。いやー、なんかもう…満足です!作者さん!愛してる!ぶちゅ (2020年5月21日 23時) (レス) id: ce0c123210 (このIDを非表示/違反報告)
夢吏ちゃん(プロフ) - 甘党。さん» 初めましてコメントありがとうございます!ずっと見て頂いてたんですね…!甘党。様が見て下さっていた1hitが凄く励まされました…!次の小説も近々公開しますので…!自作でも応援のほどよろしくお願い致します! (2020年1月12日 4時) (レス) id: 83cad32c9a (このIDを非表示/違反報告)
甘党。(プロフ) - 完結おめでとうございます…!今までコメントはしなかったんですけどずっと見てました!次の小説も全裸待機させていただきますね^ ^ (2020年1月5日 10時) (レス) id: 93d0b6d41e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢吏ちゃん | 作成日時:2019年5月6日 10時