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"夜"に、外に出たのは初めてかもしれない。

何か、書こう。
何か、見よう。

「灯火」
辺り一面に、優しい光が灯る。
没命は、違和感に気付く。
彼岸花が一輪、温かい光を纏っているのだ。
静かさと冷たさを秘めた夜に、温かさを感じることは初めてかもしれない。

没命は、近づいて彼岸花に触る。
とても、温かい。
まるで、"生きている"。

「これは初めてだ。」

つい、声に出した。
「取っても、いいだろうか?」
花だから、答えない。

「すまない。勝手だが、取らせて貰う。」
光を纏う彼岸花は、いいよと言うように、簡単に取れた。

「本当に、すまない。」

彼岸花の纏う光は、とても温かくて、優しかった。

急いで家に戻り、妹の延命に向けて手紙を書く。

『奇しき物見た、今宵の夜
優しき光、纏う華
美しき、光景
胸が焦がれて焼き尽くされそう。』

「"明日"、鈴音に届けて貰おう。」
今日は、もう寝よう。

嗚呼、その温かさで、包み込んでほしい。
その温かさで、幸せに満たしてほしい。

そう思いながら、光を纏う彼岸花をお湯を張った茶碗に浮かばせた。

そうはいかないと、知っていながら。

・→←2章【絶望】



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作者名:極楽地獄 | 作者ホームページ:無い。  
作成日時:2020年1月25日 21時

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