あの日の約束を、【時透無一郎】

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「えっ…ちょっと大丈夫！？」





心配そうな顔をして僕の傍に駆け寄り、松葉杖を拾う。





「…やっと見つけた」




思い出した。僕が今まで何を探していたのか。


あの日のことも。




「はい…？」






訳の分からなそうな顔をしている彼女の手を取る。



そうだ、たしか彼女の名前は…





「…A。僕の恋人になって」




「…は？」



Aの顔がまた歪む。




「ごめんなさい。え、頭大丈夫ですか？そこに脳神経外科あるので先生呼んできましょうか？」




「あ、いや違くて、」



「…私もう行きます」





怖がるような、なにか汚いものを見るような目で見られ、そのまま走って去っていってしまった。





いや、道の真ん中で何言ってるんだ僕は。


あっちは覚えてないかもしれないのに、初対面で恋人になって、なんて…


気持ち悪いと感じるのは当たり前だ。




でも、嫌がられるのには慣れている。


昔もそうだったから。


また見つけ出せばいい。



それよりも…


掴んだAの手がとてもか細かった。



心做しか、顔も青白かったような気もする。





また僕の前から消えてしまうんじゃないか。



そんな気がして、どうしようもなく怖かった。

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