夢_3 ページ8
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目を開けると、外は晴れているようで、満月が顔を覗かせている。
そこで、ふと気づく。
つい先程まで、月なんかどこにもなかった。
今日は確か、新月のはずだったのに、どうして。
そこで、ああ、夢か、と気づく。
知らぬうちに眠ってしまっていたようだ。
「童磨」
ふと、誰かに呼ばれる。
いつも夢の中で聞いていた、柔らかく優しい声とは違い、重圧があり、低い声。
顔を上げると、いつも通り、冷たい目でこちらを見ている人物__いや、鬼が俺を見下ろしていた。
無惨様が夢に出て来てくださるなんて…
「…無惨様!どうかされましたか?わざわざ俺のところまで出向いてくださるなんて」
「__あの娘はどうしている」
笑をたたえて言うと、無表情のまま俺に問いかける。
その言葉を聞いて、あの時の夢か、と過去のことがうっすらと戻ってくる。
「あの娘、とは?」
わざと、とぼけたふりをする。
こんなことをしても、無惨様は思考が読み取れてしまうのだから、意味は無い。
「10年ほど前からずっと匿っていた娘がいただろう」
「Aのことでしょうか…あの子がどうかしましたか?」
そう、自然に俺の口から言葉が零れる。
前から、この夢を見る度に思っていた。
この夢は、昔のことを辿っているようで、
俺の自由には動けない。
昔と同じように動くことしか出来ない。
「人に執着するのは好ましくないし、お前らしくない。鬼にするか、殺すか、どちらか選べ。1ヶ月以内にお前がもし選べないかった場合、私が殺す。」
「…承知しました」
深く頭を下げると、次にあげた時にはもう無惨様は消えていた。
そういえば、琴葉と赤ん坊を匿っていた時も、無惨様にはいい顔をされなかった。
と、今更ながら思い出す。
鬼にするか、殺すか、
判断を迫られ、あの時の俺は内心焦った。
でも、それがどうしてなのか分からなかった。
このまま置いておきたいのなら鬼にすればいいし、
そうじゃないなら今までの信者のように殺せばいいだけの話。
どちらを選ぶことも躊躇してしまう自分に、戸惑っていた。
でも俺が選ぶ必要はなかった。
その1ヶ月が経つ前に、Aは失踪してしまったから。
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寺乃(プロフ) - 小姐さん» ぜひ見ていただけると嬉しいですー!✨ (9月20日 19時) (レス) id: db666116fc (このIDを非表示/違反報告)
小姐 - 新作だー!!絶対、見まーすっっっ!!^ ^ (9月18日 18時) (レス) @page3 id: d47bf1e932 (このIDを非表示/違反報告)
寺乃(プロフ) - ほしいも(*^^*)さん» ありがとうございますぅぅぅ!!頑張りまっす! (9月17日 16時) (レス) id: db666116fc (このIDを非表示/違反報告)
ほしいも(*^^*)(プロフ) - 新作おめでとうございます!!応援してますぇぇぇぇ (9月16日 19時) (レス) @page2 id: 88768a4726 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寺乃 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Mui08081/
作成日時:2023年9月16日 16時