Half step【4】 (ページ10)

今日:19 hit、昨日:11 hit、合計:41,945 hit

156 ページ10

「でも、今日みたいに、困ったことがあればすぐ言って欲しい。」

無理やり笑いすぎて、良規は泣いてるような顔をしてそう言った。

「ありがとう。でも、気持ちだけで」

「そうやなくて、…大吾から頼まれとるから。」

は？

そう思った言葉は口には出てなくて、目の前で心配そうな顔をしている彼。

「…また東京？」

「うん。」

「…そう。教えてくれてありがとう。」

大吾は、いつもそう。
ふらっと現れたり、消えたり。

今回も良規にも、何も言わずにいなくなったらしい。

きっと人間じゃなければ、大吾はきっと猫やと思う。
自分の気まぐれで、家出したり、帰ってきたり。

「でも、大丈夫。
ひとりで、生きていけるから。」

けど、1年前までは赤の他人だった人で、私はひとりでこの街で生きてきたんやから。

大吾や良規に会って、私はずいぶんと弱くなったなぁとショックを受けながら笑ったら、向かいで彼も「そっか、」と笑った。

＊＊＊

ほんとに大吾は、ぱったりと姿を見せなくなった。

「今年ももう終わりかぁ。」

「そうやね。今年もみなさんお世話になりました。」

「来年は俺も斗亜も卒業かぁ。速かったような、長かったような…」

「何回も聞いてごめん。
なんで小島くんここにいんの？？」

西野家で年越し、その場になぜか西野姓ではない人がひとり

「お父さんは、『あーまた来たんかぁ！』って嬉しそうにしてはったで。」

いや、お父さんすでに酔っ払って人の判別できてへんからきっと。

無視して、忙しなく動いてるかおりさんに聞く。

「かおりさん、ええの？」

「…悪いやつやないからヨシ！」

「あざーす！来年もチケット用意しますんで！」

嬉しそうな顔をしたあと、また斗亜に話しかけ始めた。