Half step【4】 (ページ7)

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「…人違い、じゃ？」

関係ないないですよ〜そんなフリして、通り過ぎようとしても、追いかけられて、

「ほら！本人でしょ」

なんて、プロフィール画面を出されては足が止まる。

「A、…そうそうAちゃんそんな名前やった。」

「大阪府、兄弟構成は弟、…あ！思い出した！！会社の最寄り駅が」

「ちょっと」

もう騙せきれないと思って、顔を向けたら最後だった。

なんで無視した、とか、今日は家まで送ってくよ、とか言ってた気がする。

逃げようと思っても、行く手に身体をズラされればすぐに塞がれる。

逃げ場のない、でも圧に思わず後退りすると、誰かの靴に当たって勢いよく後ろを振り向いた。

「なにしてんの、」

斜め上には、見知った顔

ちょっと酔っ払ってたのに急に振り向いたから、バランスを崩した身体を、彼は右手1本で簡単に支えて、

1週間では、全然忘れられなかった香りに一気に包まれた。

「…知り合い？」

「彼女になにか用ですか？」

良規がそう言ったとき、ドクンと音を立てた。

「いや、でも彼女マッチングアプリしてて、…それで」

「知ってます。
それでも、一緒に帰るんで、送るとかは大丈夫です。」

良規が掴んでいた腕を解いて、手のひらを重ねて、指を絡めた。

「Aちゃん、」

「…ありがとう。助けてくれて」

「ううん。今日ははやく上がれたから。
それよりさ、」

横に並んで歩いてる顔を見上げると、バチッと合う視線。

「手、解いてな。」

「…」

そう言っても、良規の手は、解くどころか、絡めている手の力をゆるめることもない。

「繋いだのは、良規やろ。」

「初めて、かなぁ。
手繋いで歩いたん。」

しかも、こんな賑わっとるとこでさ。

付き合って出来なくなったこと、一気に2つもやってしまった。

「ねぇ、」

「気になる？」

そわそわしてる私に気づいた彼が言う。

また写真撮られたらどうしようって思ったけど、もう次はいつかわからんから。
今日くらい許してほしいなと思って、首を振った。

「…いいよ、このままがいい。寒いから」

女の子はさ、ちょっと強引にされるくらいじゃなきゃ、不安になるよ。

オネエのお姉さんがアイドルに女心教えてるTV番組って言ってたこと、今ならわかる気がする。

言ってないのに伝わったのか、手を握る力が強くなって、緩んだ顔を隠すように上を向いた。