Half step【4】 (ページ20)

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「そんなあからさまに『初めてです』みたいな顔されると、余計目立つからな？」

「…は、！」

いやまず、ここでそれ言う？

あと、初めてですの顔ってどんな？？
ていうか、無理

やって、……実際初めてやし。

って、そうゆうことやない。
なんで、こんなとこ連れてこられてんの。

半泣き、いや完全に泣いていたかもしれない状態で、正しい判断はたぶん無理で、

だから大吾に全部任せたら、こう…ね、

こそっと彼の横顔を覗き見すると、目線だけ寄越してきて、バッチりぶつかってそれ以上言い返せない。

歯がゆい私の思いとは裏腹に、エレベーターが止まる音がした。

「しゃーないやん、ここしか空いてなかったんやから。」

目的のフロアで降りて、大吾に着いていくまま入った部屋で、すぐ横の部屋に押し込まれる。

「いや！ちょっと！！」

手に持ってた荷物を取られると、ドアを閉められる。

「風呂。
とりあえず身体あっためて。話はそれから。」

1人になって、つい独り言がでる

「…そっちか。」

「まあ、それくらい元気なら大丈夫そうやな」

まだそこにいたらしい彼の声が返ってきて、頭をドアにぶつける。

足音を聞いたあと、脱衣場の鏡で自分の姿を見る。

その顔が、想像以上にひどくて、この後どうしようかと悩みながら服を脱いだ。

お風呂あがり、次に入るもんだと思ってた大吾は、お風呂には向かわず、自分が座ってる隣のスペースに座るように施した。

「コンセントこっちあるわ。はい。」

ベッドしか座るところがないってことは後で気づいたけど。

ショートヘアはすぐに乾くのがいいって思ってたけど、今この瞬間だけは、とてつもなく長く感じた。

ドライヤーを切ると、彼がつけていたテレビの音が聞こえてきた。

『台風は速度を落とさないまま、上陸しました。』

台風特番と、画面の外側にはL字テロップ

はよ、大吾帰りたいよな

そう思って、私から切り出す。

「さあ、どこから話そうか…」

「ええよ、Aのペースで。」

大吾が言いながらこちらを向くのがわかった。

けど、その声がびっくりするほど優しくて、

顔を見たらまた泣いてしまいそうで。

ベッドに上がって腰から下を布団の中に入れる。

大吾の背後から、ちょっと丸まった背中を見ながら、話し出した。

「今日さ、誕生日…やったの」