Half step【3】 (ページ26)

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頬につく寝袋特有の化学繊維のせいで、少し動くだけで、シュルシュルと音がする。

足元はフローリングの床と相性が悪く、少しずつ移動している気もする。

昔から寝つきがいい方だったとは思う。

お母さんに「あんたはどこでも寝れた。気づいたら、台所のテーブルの下で這って寝とって踏みそうになったこともあったで。」

なんてこともあった。

だから、多分今もこれは夢の中なんだろうと思ってる。

「Aちゃん、」

はーい、

「Aちゃん？お風呂出たよ、」

お風呂出たら換気扇回しといてほしいな、
ほら、換気のボタン2回押して

「まだ怒ってる…？ごめんって、悪かったんはこっちやから」

悪かった…？
なんかしたっけ？

「待って、ほんまに寝てんの？」

シュルっと音を立てて、寝袋の表面を滑っていくなにか

急に圧迫感が増した腰から下。

はっ？
夢やなくないこれ、

目が覚めた。

けど、目が開けられない。
…今、見たらダメな気がする。

感覚が戻ってきて、今1番感じるのは左半身側に誰かいるということやから

「あかんやん、こんなとこで寝たら。」

怒ってたんやで？
変態仮面って言われて、お腹に肘入れられて痛がって。

なのに、なんでそんな優しい声出す？

寝袋ごと抱き上げられたけど、するする滑る生地を思ってか、ぎゅっと掴まれる。

直接触れ合ってるわけじゃないのに、お風呂上がりの高い彼の体温をかなり感じる。

ベッドに降ろされたのがわかった。
やっと離してもらえると思ったのに、なかなか私の上からはどいてくれない。

「はぁ～～。今日もお預け、かぁ…」

いつかの彼の本気の顔を思い出した。

女子をメスに変えてしまうような、そんな欲、情的な表情。

思い出すだけで胸の奥がギュンと掴まれる。

あんなことを言ったけど、不安はある。

初めてだから自分がどうなるかわからないし、

人前で脱げるような身体じゃない…恥ずかしいし。

相性が最悪で、気持ちよくさせられないかもしれないし

1回しちゃったら、関係が変わってしまうんじゃないかとも思ってしまう。
ずっとそうなるんじゃないかって、

あ、でもずっと手を出してもらえないよりはマシなのかな