Half step【3】 (ページ25)

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「そのAちゃんっていうやつ、やだ。
恥ずかしい」

さっき、ポイっとどこかに置いてきたバスタオルを持っていた彼は、私の頭に被せて、1束ずつ丁寧に雫を拭き取っていく。

「えー？
Aちゃんやって。結構抜けてるとこあんもん。
やから、可愛い可愛いAちゃん？」

「どこが…？？
…ほら、すぐ出てこんやん。」

口は一応動いてるけど、それどころじゃなかった。

だって私、ナチュラルにお世話されてる。

なーんもできない私と、なんでもしてあげたい正門くんがいる。

私、ちゃんと彼の好きなタイプだった…？

「…言っていいん？

クローゼットの中身、丸見えやけど」

なんて自惚れてたから、一気に目が覚めた。

数時間前、いっかと思ってクローゼットに詰め込んで衣装ケースにしまいきれてなかった下着がそこに居座っていた。

「ミントグリーンのブラ、あの薄いブルーのもええなぁ、痛っ！なにすんの！」

「知らない！！正門くんの変態、！スケベ！！
むっつりすけべ！！！」

頭に血が登りすぎて、考えるより早く口が開く。

「はぁ！？
…でも間違いやとも言えへんのが悔しいけど、」

「は！？変態なの！？パンツ被ってる人！？」

「違う！！変態仮面ちゃう！！！」

立とうとして、寝袋で足が滑って空回る。

バランスを撮ろうとして咄嗟に掴んだものを投げようとして、それがさっき彼が言ってた薄いブルーのブラとセットのパンツだと手を離す直前で気づく。

その隙に、さっきまで私の頭の上にあったバスタオルを持った彼はさささっと移動する。

「お風呂もらいます〜！！」

「ちょっと！！」

「でも俺は黒か紺が好き。」

それだけ言いに戻ってきた彼が脱衣場のドアを閉めた音が響く。

「アホやん。」

思わずそう呟いた後、自然と口角が上がってふふっと笑みが漏れた。

アホだ、正門くんも自分も。

初めて、家に来た彼氏とブラとパンツの投げ合いしようとしてたなんて。

寝袋のまま、もう一度床に寝転んでからも、笑いはなかなか止まらなかった。