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『き、岸くんっ!?大丈夫?』
駆け寄ってきてくれたAさん。
俺の顔を覗き込むように見つめている。
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よかった、会えた…。
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俺は倒れたまま、彼女の頰に手を当てた。
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ああ、本物だ。
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「ずっと、会いたかったっす。」
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転んだ衝撃で頭がおかしくなったのかもしれない。
俺は気がつくと、そんなことを口にしていた。
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『もう、岸くん…ほ、ほら、立って?』
彼女は頬に触れていた俺の手を引いた。
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その時、昔の記憶を思い出した。
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それは彼女の忘れ物を届けに行った時のこと。
今みたいに俺が転んで、彼女が助けてくれた。
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Aさんも、覚えてるかな。
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『岸くんがずっと待ってる、なんていうから
…来ちゃったよ…。』
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「えっ…もしかして、なんか用事ありましたか…?」
俺が聞くと、彼女は「ないけど…」とバツが悪そうに言った。
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「それなら、よかったっす。」
安心して笑いかけると、目をフイっと逸らされた。
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あれっ、俺なんか悪いことしたかなぁ…?
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作者名:Mother | 作成日時:2020年4月3日 21時